子連れ避難 持ち出しグッズに優先度 様々な状況想定し訓練を

写真はイメージ(hirost/PIXTA)

災害が起きたら、どうやって避難しよう―。乳幼児がいると普段の外出でも荷物が多くなります。防災グッズは持ち出す優先度をつけて暗闇でもわかる場所に置くなど、日ごろの備えが肝心です。実際に避難所まで歩いたり、そこで過ごすことを想像したり、家族で備えるポイントを防災士2人に聞きました。

必需品は枕元に 避難所まで歩いてみよう

北斗市の上磯高教諭、伊藤友彦(ともひろ)さん(50)は3歳児の子育ての経験から、まずベビーベッドや布団周りの安全確認を挙げます。地震の際に物が落ちたり棚が倒れたりしないか。次に防寒具や子どものケア用品、ヘルメットなど防災必需品は持ち出せるようにまとめて枕元に。停電でどこに何があるか分からなくなる恐れがあるためです。割れた食器を踏んでけがをしないよう、靴もあると良いでしょう。

伊藤友彦さん(本人提供)

避難は命が最優先。津波到達までの時間が短い地域もあります。

避難時は両手が使えるよう抱っこひもとリュックが便利です。「持ち出す物を災害時に慌てて詰めると荷物が多くなりがち」と伊藤さん。1次避難では身の回りの物や命を守る防災グッズ、一時帰宅の安全が確認できてからの2次避難では備蓄品などと優先度をつけておきます。

訓練は緊急度や時間帯などさまざまな状況を想定します。例えば一方の親が不在の時、大人1人で子ども2人をおんぶに抱っこなら、荷物は大きめのウエストポーチなどに。防寒対策にどれくらい時間がかかるか、持って歩ける荷物の重さは―。「いつかではなく、今日やってみて」と伊藤さんは促します。

避難所の環境は? 地域ごとに異なる備蓄

避難所の環境は地域によって異なります。札幌、旭川、函館、釧路の4市で避難所に備蓄している乳幼児向け物資は、札幌の紙おむつと哺乳瓶・飲み口だけです。ミルクは4市とも庁舎や支所などで保管しており、災害時に各避難所に配布します。水害や液状化発生時は時間がかかる恐れがありますが、函館市は「防災専用品ではないので品質維持のため集約して管理せざるを得ません」(災害対策課)と頭を悩ませています。

離乳食は旭川がおかゆ、函館が幼児向け栄養補助ゼリーを用意。お尻拭きや衣類は4市とも備蓄していません。アレルギー対応ミルクやおむつのサイズなど、心配なことがあれば自治体に確認しておきましょう。

子どもの食事や衛生用品はできる限り持参し、平時に試しておきます。伊藤さんの子どもは「市販のベビーフードは種類によっては食べられました。液体ミルクは気に入らなかったようです」。

内閣府は避難所運営ガイドラインを公表していますが、乳幼児が必要とする配慮に運営者が気付かない場合もあります。伊藤さんは「防災訓練や計画づくりなど日常の地域活動にできる限り参加してほしい」と呼び掛けます。

乳幼児は低体温症、妊産婦は血栓に注意

災害時はけがや病気の予防も重要です。函館市の産婦人科看護師、岡元美由紀さん(54)は、乳幼児は低体温症になりやすく、ぬれた場合の着替えがあると良いと話します。脱水症状や、ほこりが舞う避難所での飛沫(ひまつ)感染、アレルギー症状の悪化にも注意が必要。飲み物やマスク、使い慣れた薬、母子健康手帳を携行するよう呼び掛けています。

岡元美由紀さん(本人提供)

子どものリュックに大切なおもちゃやタオルを入れることもお勧めです。安心感が得られると言います。避難途中ではぐれた時のため、連絡先も書いておきましょう。

また妊婦は、長く同じ姿勢でいると血液の塊(血栓)ができ肺の血管に詰まる静脈血栓塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)になりやすいと言われています。出産の出血に備え血液が固まりやすくなっていることなどが原因です。産後でも帝王切開や肥満傾向の人はリスクが高いそうです。

岡元さんは「防災を学べる絵本など、親子で気負わず楽しく備えてほしい」と話します。住んでいる地域の災害想定や発生時の行動を書き込む「あかちゃんとママを守る防災ノート」(NPO法人MAMA―PLUG)もお勧め。内閣府のホームページでダウンロードできます。

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

この記事に関連するタグ

Area

北海道外

その他