出産前に知っておきたい「さい帯血バンク」のこと。新しい命が救う、もう一つの命とは?

PR / 日本赤十字社 北海道さい帯血バンク

ママと赤ちゃんを結ぶへその緒と胎盤に流れる血液のことを「さい帯血」といいます。出産時にしか採取できないこの貴重な血液が、白血病をはじめとする血液疾患の治療に役立つことをご存じですか?

さい帯血には血液をつくる「造血幹細胞」がたくさん含まれているため、血液を正常につくることができない患者さんに移植することで、血液をつくる力を回復させ病気を治すことができます。ここでは、さい帯血の提供方法や、どのように役立っているかをご紹介します。

さい帯血はどうやって提供するの?

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さい帯血は、赤ちゃんが無事に生まれてから、切り離したへその緒に針を刺して採取します。この時、胎盤はまだママのお腹の中にありますが、神経は通っていないので、痛みはまったくありません。採取する量も60~150mLとそれほど多くないので、処置は5分以内に済みます。そのため、赤ちゃんや母体への負担はなく、分娩の経過にも影響はありません。

北海道の場合、採取されたさい帯血は「日本赤十字社北海道さい帯血バンク」(札幌)に運ばれ、採取量や細胞数の検査が行われます。基準に合格したさい帯血は、移植に使えるように調製してから液体窒素タンクで冷凍保存。移植病院から申し込みがあると、白血病や再生不良性貧血、悪性リンパ腫などの血液疾患の患者さんのもとへさい帯血が届けられます。

さい帯血提供の流れ

さい帯血バンクには、法律に基づき厚生労働大臣の許可を受けた「公的バンク」と、法律による規制の対象外で民間企業が運営する「民間(プライベート)バンク」の2種類があります。公的バンクが病気で苦しむ第三者のために無償で提供されたさい帯血を患者さんに提供するのに対し、民間バンクは将来、本人や家族のために自ら保管費用を支払い保存する仕組みです。

さい帯血のここが気になる!
読者3人が専門家に聞いてきました

左から清野浩恵さん、小川祥子さん、佐藤めぐみさん

左から清野浩恵さん、小川祥子さん、佐藤めぐみさん

mamatalk読者を代表して、ともに第2子の出産を控えている清野浩恵さんと小川祥子さん、第3子を出産したばかりの佐藤めぐみさんの3人が、造血幹細胞移植の第一人者である、北海道大学大学院医学研究院の豊嶋崇徳教授に、さい帯血について気になることを質問してきました。

教えてくれたのは

北海道大学大学院
医学研究院
豊嶋崇徳教授

てしま・たかのり 鳥取県出身。九州大学医学部卒業。米国留学、九州大病院准教授などを経て2012年から現職。北大病院検査・輸血部長も兼任。専門は血液学、造血細胞移植学など。新型コロナの唾液による検査方法を確立し、21年北海道新聞文化賞、22年保健文化賞を受賞。

清野さんは今回の出産の際にさい帯血の提供を希望しています。「長男の出産のときは、緊急帝王切開になったため提供できなかったので、次こそは」と意気込みを聞かせてくれました。

第1子に続いて、今回も提供を予定している小川さんは、「プライベートバンクも考えましたが、今すぐ必要な人に使ってほしい」と話します。

第3子の出産時にさい帯血の量が足りなくて提供できなかったという佐藤さんは、「どんな場合に提供できないかなど、もっと詳しく聞いてみたいです」と質問に臨みました。

子宮と胎盤、へその緒が付いた赤ちゃんの人形でわかりやすく説明する豊嶋教授

子宮と胎盤、へその緒が付いた赤ちゃんの人形でわかりやすく説明する豊嶋教授

清野さん 骨髄移植とさい帯血移植の違いは、かなり大きいのでしょうか?

豊嶋教授 骨髄移植ではHLAと呼ばれる白血球の型が適合する必要がありますが、その適合率は、同じ親から生まれた兄弟でも4分の1、他人との適合率になると、1万分の1とかなり難しくなってしまいます。その点、さい帯血はそれほど厳密でなくても移植をすることができるんですね。

さらに、提供するドナーへの負担が少ないのも大きな違いです。骨髄移植の場合はドナーに全身麻酔をかけて採取し、痛みも伴います。さい帯血は、出産時に廃棄されるへその緒から採取するので、赤ちゃんはもちろん、お母さんにもまったく負担はありません。しかも、骨髄移植で採取する骨髄液は約1L。さい帯血は数十mL程度あれば十分です。

清野さん そんなに違いがあるんですね。

豊嶋教授 入院や健康上のリスクも伴う骨髄移植と違い、さい帯血移植の場合は安全なお産が最優先ですから、母子へのリスクもありません。

マイナス196℃で10年間保存されるさい帯血。この量で助かる命があります

マイナス196℃で10年間保存されるさい帯血。この量で助かる命があります

佐藤さん さい帯血は、白血病のほかにどんな病気の治療に役立つのでしょうか?

豊嶋教授 さい帯血は、白血病以外にも正常に血液がつくれない病気や、生まれつき免疫に異常のある子どもの治療にも使われます。免疫はさまざまな病気に関係するものですから、さい帯血の可能性もまだまだ広がっていくと思います。

佐藤さん 採取したすべてのさい帯血が、移植に使えるわけではないのですか?

豊嶋教授 残念ながら採取量や血液の中に含まれる細胞数が少なかったり、検査結果に問題がある場合に利用できないこともあります。採取したうち、冷凍保存まで至るのは3割ほどです。ですから、なるべく多くの妊婦さんにご協力いただけたらうれしいですね。

一人ひとりの発言に熱心に耳を傾ける豊嶋教授と読者のみなさん

一人ひとりの発言に熱心に耳を傾ける豊嶋教授と読者のみなさん

小川さん 子どもの病気の治療にも役立つと聞くと、ますます役に立ちたいと思ってしまいます。今、さい帯血は十分に足りているのでしょうか?

豊嶋教授 全国で1万本のストックがあれば、安定的に移植医療を行うことができると言われていますが、現在は1万本を少し切るくらいの保存数です。目には見えなくても困っている人たちは、まだまだたくさんいます。

日本は災害の多い国です。骨髄移植のようにドナーの移動が必要な場合、災害が起きて移植できないということだってあります。そんなとき救世主になってくれるのが、さい帯血バンクです。実際に、2011年に発生した東日本大震災の時に骨髄の採取ができなくなったことがありましたが、さい帯血で補うことができました。

誰かのためにと思って、骨髄バンクに登録してくださっても、さまざまな事情で採取できない場合もあります。そういうリスクも、さい帯血なら回避できるんですよ。

「もっとみんなに知ってほしい!」とママたち

「もっとみんなに知ってほしい!」とママたち

豊嶋教授のお話を聞いた読者のみなさんは、さい帯血への理解が深まったと話します。

「教授のお話が、すごくわかりやすくて勉強になりました」と清野さん。「さい帯血のことをもっとみんなに知ってほしいですね」という小川さんの言葉に、ほかの二人もうなずきます。佐藤さんは「私は2カ月前に採取しましたが、何の負担もありませんでした。ぜひ多くのママたちに提供してほしいと思います」と呼びかけました。

さい帯血移植を受けて白血病を克服
「命を救ってくれたママと赤ちゃんに感謝の気持ちでいっぱいです」

若い世代のがんで最も多いのが「白血病(血液のがん)」です。この病気は厳しい治療や長期にわたる療養生活が強いられます。さい帯血移植を受けて白血病を克服した矢田江梨子さんにお話を伺いました。

さい帯血移植という選択肢があって救われました

矢田さんは、就職した年の夏、21歳のときに急性骨髄性白血病と診断されました。抗がん剤治療で一時は回復したと思われましたが、その後、再発。23歳のときにさい帯血を移植しました。

「再発を宣告されたときのショックは、初めて白血病と診断された時よりもかなり大きく、脚がガクガクと震えました。治療の辛さを知っていたからです。骨髄移植を試みましたが、妹とはHLAが合わず、骨髄バンクを頼ることに。ところが、紆余曲折の末、ドナーが決まらなかったんです。そんな中、主治医の先生がさい帯血移植の道を見つけてくださいました」と矢田さん。

さい帯血移植後、5カ月間の入院を経て退院。「再発前は、普通の生活を送ることに憶病になっていました。再発後は、さい帯血で新しい命をいただいたので、今度は時間を無駄にできないぞというポジティブな気持ちが湧きました」。退院後は体力づくりに努め、1年半後に社会復帰。医療事務の職に就き、がん患者をサポートする活動にも参加しました。その活動を通して出会った男性と結婚。現在は、仕事と家庭を両立しながら、元気に過ごしています。

「私が移植を経験した頃より、さい帯血の移植件数が増えていると聞いています。私と同じような病気で苦しんでいる患者さんを救ってくださっている全国のママさんたちには、感謝の気持ちでいっぱいです」。矢田さんはそう、笑顔で話してくれました。

ママの思いが誰かの命を救います。
出産時にしかできない「さい帯血の提供」へ協力を

北海道さい帯血バンクのポスター

近年、さい帯血の移植件数は骨髄移植よりも多くなっていますが、少子化などの影響で全国的にさい帯血の保存数が足りない状況が続いています。さい帯血の提供は、出産時のママと赤ちゃんにしかできない社会貢献です。これを機に、さい帯血で救われる命のバトンリレーに参加してみませんか。

さい帯血の採取は、限られた施設でしか行えません。もし、これから妊娠や出産を予定されている方は、産院選びの基準にさい帯血の採取が可能な施設という選択肢を入れるのも一案です。現在、道内では札幌市、旭川市、石狩市の合計12施設で行われています。さらに詳しい情報は、北海道さい帯血バンクのホームページで確認してみてくださいね。

さい帯血を採取・提供できる北海道の産科施設はこちら

北海道さい帯血バンクについて詳しくはこちら


問い合わせ先:
日本赤十字社 北海道さい帯血バンク
☎︎011・613・8765

取材・文/菅谷環 撮影/菅原麻紀
※本記事は2022年8月に取材した内容です。

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