災害時、乳幼児を守るために最低限用意したいものは? 防災士に聞く、備えのポイント

大規模災害が発生した場合、避難所に移動するにしても、自宅で乗り切る場合も、水や食料品などの備えは必要です。乳幼児がいる家庭ではおむつやベビーフードなど、さらに必需品が多くなります。最低限用意する物は何か、札幌在住の防災士で、中学2年生と小学6年生の男子を子育て中の水口綾香さん(41)に聞きました。

水口綾香さん

水口綾香さん

野菜不足の恐れ 乾物で代用

家庭の備蓄品=図=について、水口さんは「避難所では、乳幼児向けの物資が十分用意されていない可能性があります」と指摘し、おむつやお尻拭きシート、ミルクなど子どもが生活する上で必要な物を用意するよう呼びかけます。

ミルク育児の場合は、液体ミルクを用意したり、洗浄が必要な哺乳瓶ではなく、使い捨ての小さな紙コップで飲ませたりします。離乳食の場合、月齢に合わせたベビーフードが欠かせません。野菜や果物が不足しがちになるため、すりおろした果物が入った商品やゼリー、野菜の乾物があるとなお良いです。

水口さんは「非常用の食品は、普段の食事でも使えます」と助言します。例えば、クリームタイプのコーン缶(1人分95g)とホットケーキミックス(同100g)、油1滴を耐熱性のポリ袋に入れて混ぜ、空気を少し残したまま袋の口を結び、鍋でゆでるだけで蒸しパンができます。野菜の乾物は、パスタやスープ、みそ汁に入れると栄養バランスが良くなります。備蓄品を活用し、平時でも手軽に時短料理が可能です。

水や食料の備蓄は、家族1人に1週間分が基本。水は1人1日3リットル、食料は1日3食分が必要です。ただし、妊娠中や授乳中の女性は、1日により多くの栄養を必要とするため、その分を考慮して準備します。

風呂敷は抱っこひもに さらしは包帯や汗拭きに

また、いざという時に備蓄品を持って避難できるよう、持ち出し袋=図=も活用しましょう。大きめのバッグに、スマートフォンのバッテリーや生理用品などを入れて玄関に置きます。乳幼児のいる家庭にお勧めなのは大きめの風呂敷とさらしです。風呂敷があれば、抱っこひもや授乳ケープとして利用できます。さらしは、包帯代わりや汗拭きに。おもちゃや塗り絵などもあれば、子どもの気分転換になります。

水口さんは、2011年に千葉県習志野市で東日本大震災に遭いました。夫は出張中で1歳8カ月の長男と2人きり。防災への意識は高く、備蓄品を用意していたが、「甘かった」と振り返ります。アレルギーがある長男のベビーフードが3日分しかなかった上、慣れていないためか嫌がって食べませんでした。別の食料品を求めて長蛇の列ができたスーパーに並んだといいます。

普段と同じ生活が望ましい

災害時は、子どもの心への負担を軽くするよう、普段と同じような生活が望ましいとされます。被災後、自宅で安全に過ごせる状況であれば、子どもに合った食事を作り、お気に入りのおもちゃで遊べるなど、日常と変わらず過ごしやすくなります。ただし、情報が入りづらかったり、孤立化しやすかったりするため、在宅避難でも、日中に避難所に行き、物資や情報を得ると良いでしょう。

自宅で避難する判断基準は、けがをせず、安全に眠ることができるかどうかです。事前に、ハザードマップで、地域の危険性について把握しましょう。被災後は、ガラスや基礎、壁にひびが入ってないかなども確認します。

取材・文/田口谷優子(北海道新聞記者)

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