連載コラム「井澤綾華の働くママごはん」終了 農場暮らし発信5年半 交流広げ未来に
北海道新聞朝刊子育て欄とmamatalkで連載された、料理研究家の井澤綾華さん(31)のコラム「働くママごはん」が54回目の今回で終了しました。前身の「うちのごはんができるまで」(13回)と合わせて掲載期間は5年半。空知管内栗山町の井澤農園から、旬の野菜と四季折々の風景、工夫を凝らした食卓と3人の子育て記を伝えてきました。札幌育ちの綾華さんが憧れた農場暮らしは7年目。豊かさと、大変さをかみしめる日々です。
1992年、札幌市生まれ。管理栄養士の資格を生かし、雑誌やテレビのレシピ監修などを行っている。また、空知管内由仁、栗山両町の孝宏さんら若手農業者グループがブランド化に取り組む「由栗(ゆっくり)いも」の情報発信や通信販売も担う。
https://www.instagram.com/izawa_ayaka/
「葉っぱたたいたら、葉っぱについてる白いふわふわ飛んできた」。ビニールハウスの家庭菜園で長女の乃々華(ののか)ちゃん(5)が笑いました。長男の孝彰(たかあき)ちゃん(3)はスコップで土を掘るのに夢中。ゴーヤーの黄色い花をじいっと見ているのは次男の孝亮(こうすけ)ちゃん(1)。畑で育つ井澤農園の子どもたちです。
綾華さんが農園4代目の孝宏(たかひろ)さん(34)と結婚したのは2017年春。栗山町の地域おこし協力隊員として、農業に関わったことがきっかけでした。幼い頃から家庭菜園と料理に親しみ、「食のプロになろう」と天使大(札幌)の栄養学科へ。大学時代に後志管内真狩村で農業体験した時に「地域や作物について熱っぽく語る農業者の姿に心打たれた」ことで、力になれる職業を探し、協力隊員になりました。
これまで、町民に地元野菜を知ってもらう栗山ファーマーズマルシェ(朝市)を催すなどしてきました。現在は井澤農園で、農作業のほか情報発信や通信販売を担当しています。
農家の野菜嫌い
「うちのごはん」の初回は18年3月。ほぼ同時に乃々華ちゃんが誕生、第2回には生まれたてホヤホヤの写真が紙面を飾りました。20年に孝彰ちゃん、22年に孝亮ちゃんが生まれました。
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「まさか農家の子が野菜を食べないなんて」とつづったのは20年7月、乃々華ちゃん2歳の時。イヤイヤ期を迎え、野菜を口に運ぶと食卓から逃げ出した。おやつに混ぜたり、家族が食事に誘ったり。「あの手この手で試みていますが、相手は手ごわく持久戦になりそう。同じ境遇の方、頑張りましょうね!」と書きました。
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実は、孝宏さんもかつては野菜嫌い。苦手なニンジンを白菜と塩こうじであえるなど、綾華さんが料理の幅を広げて食卓に並べたところ、何でも食べられるようになったと言います。
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子どもたちに野菜を食べてもらう試行錯誤は続いていますが、それでも「パパが作った野菜」は特別な存在。おいしいと消費者の感想が届けば喜び、スーパーで野菜を見ると「井澤農園の?」と聞きます。保育園の帰りやお散歩がてら畑に寄り、孝宏さんたちの仕事を間近で見て、たまにカボチャを運んでお手伝い。「作った人の思いを感じることは大切な食育の一つ」と話します。
ただ、農繁期はトラクターなどが行き交い、機械化が進んで子どもが手伝えることは少なくなりました。農機具など危険な物も多く、屋外では自由に遊べません。農作業体験は専ら家庭菜園。ブルーベリーやイチゴを採って作るジャムとジュースは子どもたちの大好物です。
8人家族の台所
農作業や料理研究家の仕事をしながら、4世代8人家族の食事を用意するのは大変なこと。連載では、炊飯器を使った炊き込みピラフや夏野菜の常備菜など時短料理を紹介してきました。楽で飽きない、スパイスや具材を変えた2種類の「相がけカレー」も提案。冬に大助かりの保存食は、21年12月に初の白みそ作りについて「大豆の皮を取り除く手間はあるけれど、西京漬けなどに活躍」と報告しました。
地域の中での他世代との交流は、楽しく、学ぶことが多いそうです。ただ、子どもの数は思っていた以上に少なく、保育園などで一人一人の個性を尊重できる雰囲気があるのは良いことですが、つい地域の未来を考えてしまうと言います。「地方は新しい情報を得るのが難しい。伝統を尊重しながらも変えるべきことはあます。農家だけでなく街に住む人、保育園の親、商店主といった横のつながりを広げて、さまざまな視野から地域のために面白いチャレンジをしたいです」
取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)
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