自閉症の息子、つなぐ家族の絆 札幌の動画配信女性「みっちゃんママ」が出版

「2歳半のみっちゃんがくれたもの」の表紙

「2歳半のみっちゃんがくれたもの」の表紙

重い知的障害と自閉症のある長男みつきさん=みっちゃん=(15)ら家族の暮らしを動画で発信している札幌在住の女性「みっちゃんママ」(43)が、「2歳半のみっちゃんがくれたもの」を出版した。子ども時代に自分が受けたネグレクト(育児放棄)、みっちゃんの障害と向き合う姿を見せることで確執のあった母親と和解に至る様子など、動画では発信されていない葛藤とともに深まる家族のつながりを描いている。

母親との断絶・和解、障害と向き合う葛藤描く

ママは、夫=パパ=(41)と2022年の検査で「2歳半程度の精神発達年齢」とされたみっちゃん、みっちゃんの妹ことりさん=こっちゃん=(12)の3人と暮らす。ママは「自閉症について知ってほしい」という思いで動画づくりに力を注ぎ、19年8月から今月16日現在で791本を投稿。チャンネル登録者数は14万人を超える。本の執筆は「動画だけでは伝えられない面を伝えたい」と思い立ったのがきっかけだった。

序章は、朝食抜きで登校せざるをえず、誕生日祝いもない子ども時代のネグレクトや、20歳ごろの母親との断絶をつづる。一方で「温かくて明るい家庭を絶対につくる」という思いを抱いて結婚、妊娠・出産へと至るまでを著している。

YouTube​に​投​稿​さ​れ​た​動​画​に​登​場​す​る​み​っ​ち​ゃ​ん​(​左​)​と​マ​マ​=​YouTubeブ​動​画​か​ら​

YouTube​に​投​稿​さ​れ​た​動​画​に​登​場​す​る​み​っ​ち​ゃ​ん​(​左​)​と​マ​マ​=​YouTubeブ​動​画​か​ら​

第1章は、みっちゃんの障害と向き合う葛藤とみっちゃんの障害特性、ゆっくりとした成長が軸。3歳で自閉症と診断した医師から「一生、しゃべれないかもしれない」と伝えられるつらい体験があったが、パパの楽観的な言葉や家族も支援してくれる療育施設とのつながりの中で、少しずつ不安が解消していく状況が記される。

ママの父親の葬儀の前、母親に「恥ずかしいから、連れてこなくていい」と告げられた。しかし、葬儀会場でいすに長時間座れないみっちゃんに、パパとママが冷静に対応する姿を見せることで、母親のみっちゃんへの理解につながった。そして母親は「小さいとき、ごめんね」とママに謝罪、2人は和解する。

写真右/障害のある兄と共に両親に愛されているこっちゃん、写真左/マ​マ​と​共​に​子​ど​も​た​ち​の​成​長​を​見​守​る​パ​パ​=YouTube動画から

写真右/障害のある兄と共に両親に愛されているこっちゃん、写真左/マ​マ​と​共​に​子​ど​も​た​ち​の​成​長​を​見​守​る​パ​パ​=YouTube動画から

第2~6章は、みっちゃんの障害特性である「こだわり」やパニックについての説明と対処法、学校やデイサービスでの生活状況や、ママを除く家族3人の強度の偏食、こっちゃんの「きょうだい児」としての心のケア、自身が疲れすぎないようにするセルフケアの大切さ―など、経験に基づいた解説が示される。

ママは「みっちゃんがつないでくれた母とのつながりの復活は『こんなことがあるんだ』という思いに包まれた。今は、夫や子どもたちと出会えたおかげで生きていけると感じている」と強調している。

「2歳半のみっちゃんがくれたもの」(KADOKAWA)は四六判224ページで1540円。全国の書店、アマゾンなどネット通販で販売されている。

動画はYouTubeチャンネル「Hikari Kizuna TV」(ひかり絆TV)https://www.youtube.com/@TVHikariKizuna/featuredから視聴できる。

取材・文/弓場敬夫(編集委員)

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