不妊治療「費用高い」96% 夫婦の5.5組に1組が受診・検査 mamatalkアンケート

高額な費用のかかる体外受精などの不妊治療に対し、国は2022年4月から公的医療保険の適用を開始します。mamatalkで行ったアンケートでは、治療を進める上での課題として「経済的負担」「仕事との両立」などが多くを占め、周囲の無理解や精神的なケアの充実を求める声があがりました。結果と、寄せられた意見の一部を紹介します。

経験者 仕事との両立も悩む

「経済的事情で、2年続けた不妊治療の継続を断念した」。国の助成金が受けられなくなる43歳の誕生日を1月に迎えた札幌市の女性は電話口でこう言いました。女性が通院していた市内の不妊専門クリニックは、一回の体外受精に約60万円。これまでの治療総額は200万円を超えます。

国は、治療が保険適用となるまでの措置として、1月から体外受精などの治療の助成金を拡充。初回30万円、2回目以降は15万円だったのが、初回と同じ30万円に引き上げられ、夫婦の所得制限も撤廃されました。ただ、妻が43歳未満とする年齢制限は残りました。女性は「私のように金銭的な理由で治療を諦める人は少なくない」と訴えます。

子育てウェブメディア「mamatalk(ママトーク)」で12月末~1月上旬に実施した不妊治療に関するアンケートには、20~50代の男女計184人が解答。83%が保険適用に「賛成」でした。 不妊治療経験者(136人)のうち、96%が「治療費の高さ」を課題に挙げました(複数回答)。治療費の総額が「10万~100万円未満」と回答した人は38%と最も多く、「100万~300万円未満」32%、「10万円未満」25%と続きました。

「治療費の高さ」の次に課題として多かったのは「仕事との両立」(84%)。「体外受精の採卵日は直前に決まるので、急に休みをとったり業務を代わってもらったりするのが心苦しくて退職した」(空知管内女性・33歳)、「通院しやすいパート職に転職した(函館市女性・39歳)など、治療中に仕事をしていた人(1110人)の22%が退職または治療を受けやすい職場への転職を選んでいました。

その他、課題として挙げられたのは「いつまで続けたらとの不安」(82%)、「身体的な負担」(77%)、「周囲の無理解」(40%)、「医療機関が遠い、少ない」(33%)と続きました。

国立社会保障・人口問題研究所の15年調査によると、国内では夫婦の5.5組に1組が不妊の治療や検査を受けているとされます。18年に国内で体外受精で生まれた子どもは5万6979人で、国内の出生数全体の6.2%に相当します。

保険適用で「隠し事」脱却
IVF大阪クリニック・福田院長に聞く

日本受精着床学会理事も務める「IVF大阪クリニック」の福田愛作院長に話を聞きました。

――体外受精の治療が保険適用となります。

「不妊治療を受けるカップルは年々増加し、18年の体外受精件数は約45万件と、世界で最も多く実施しています。国はこれまで消極的でしたが、疾病としての不妊症に保険適用をするのは、不思議なことではないと思います。これにより、不妊治療が『隠し事』などではなく、その他の病気治療と同様に、大手を振って受けられようになるのではないかと期待しています」

――アンケートで経済的負担が一番の課題でした。

「金銭的な問題から治療を諦めるカップルを多く見てきました。保険適用となれば、自己負担の上限額を設定した高額療養費制度もあり、誰でも治療を受けられるようになります。当事者には大きな一歩です。また、どの医療機関で治療を受けても同じ費用となるので、治療費の透明化につながるメリットもある。患者が医療機関を選びやすくなる効果もあると思います」

――不妊治療は個人に合った「オーダーメード治療」と言われます。保険適用により治療しにくくなるのでは。 「例えば、卵子(卵胞)が育ちにくい人には補助治療などのオプションを付け足して、体外受精の成績向上を目指しているのが現状です。不妊は原因もさまざまで、個人によって最適な治療法も変わります。とはいえ、採卵から移植までの体外受精の根幹部分は同じ。全額自己負担となる自由診療と組み合わせる混合診療は原則禁止されていますが、不妊治療は併用が認められる方向で議論されることを期待します。根幹部分は保険診療、オプション部分は自由診療となれば、医療の質を低下させることなく、患者にとっても恩恵が大きいと思います」(根岸寛子)

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