連載【0カ月からの育児塾】

出産に関わる手続きとお金の話

写真はイメージ(elise / PIXTA)

妊娠から出産の前後にかけては、さまざまな制度に基づく手続きがあり、お金もかかります。ただ多くの場面で、行政による助成制度が整っています。帝王切開などで医療費が高額になった時にも、頼れる制度があります。どの場面でどのくらいの額を受け取れるのかシミュレーションしておくと良いでしょう。北海道助産師会会長の高室典子さん(札幌)に聞きました。

節目ごとに助成制度 行政や病院に相談を

「お金のことは心配だろうけれど、支援制度がたくさんあります」と高室さん。妊娠から出産にかけては基本的に自己負担ですが、誰にとっても必要なことはおおむね助成制度などで賄えるようになっています。

妊娠・出産にかかわる制度と経済支援

診察を受け妊娠と分かれば、まず居住する市町村の窓口に、病院で手渡される妊娠届け出書を提出します。このとき受け取るのが、母子健康手帳。「妊娠出産に関わる知識や制度を知る手がかりとなります」と高室さん。妊娠の経過や子の成長を記入する欄の他、多くは制度の説明や担当窓口が紹介されています。装丁は市町村ごとさまざま。地域性がうかがえる温かな印象のデザインで描かれているものが多くあります。

妊娠中に欠かさず通いたいのが、病院での妊婦健診。妊娠初期は4週に1回、出産を控えた時期は週1回など、厚生労働省は計14回の受診を推奨しています。高室さんは「逆子や切迫早産などの異変を早期発見するため、妊婦健診は受けるべきものです。貧血検査を受けずに出産に臨めば大出血の恐れもあります」。

妊婦健診をきちんと受けてもらうため、14回分の健診費用の大半を助成する受診券などが市町村から、母子手帳交付の際に一緒にもらえます。

また何かと増える出費へのサポートとして、国の交付金を基に「出産子育て応援金」などの名称で、妊娠と出産時に各5万円が市町村から支給されます。保健師との面談を併せて行う場合が多いです。

働く人に心強い制度もあります。おなかの張りやつわりでつらい時は、休憩の延長や出勤時刻の変更などを職場に求めることができます。医療機関などが発行する「母性健康管理指導事項連絡カード」の提出を受けた事業主は、適切な措置を講じる義務が生じます。

出産は多くの場合、最も多額の費用がかかります。それを補うのが、健康保険や国民健康保険制度による「(家族)出産育児一時金」の48万8千円です。仕事を持ち被保険者となっている人自身が出産する場合は、「家族」の2文字が外れますが内容は同じです。出産事故で重い脳性まひとなった子どもに補償金が支払われる産科医療補償制度の掛け金1万2千円と合わせ、全部で50万円が支給される形です。

旭川市の母子健康手帳。絵本作家あべ弘士さんがデザイン。左は同市のシンボルキャラクターあさっぴー(同市提供)

旭川市の母子健康手帳。絵本作家あべ弘士さんがデザイン。左は同市のシンボルキャラクターあさっぴー(同市提供)

切迫流産や帝王切開で医療費の自己負担がかさむことも考えられます。その場合は、高額療養費制度で定められた1カ月の基準額を超す負担を免れることができます。

所得などのため健康保険に加入できない一定の要件に当てはまる人の場合、出産育児一時金制度には該当しない代わり、道や市が指定した施設で無料または安価で出産できる「助産制度」があります。

産後は14日以内に市町村に出生届を提出するとともに、加入している健康保険などの被扶養者に加えるなどの手続きが必要です。乳幼児をはじめとする子どもたち対象の医療費助成制度は、市町村ごとおおむね充実しています。道の基準では通院・入院ともに自己負担1割など。これに上乗せした市町村独自の制度を持つところが多くあります。

この他にも低出生体重児の医療費助成などさまざまな制度があります。高室さんは「困っている人には必ず支援の手があります。保健所や市町村、病院の窓口に相談してみて」と話しています。

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

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