産後ケアホテルで休息を 寝不足解消、授乳指導、エステも 札幌の団体「Cocokara」が本格開業目指す

母親らが宿泊したホテルの部屋

札幌の団体「Cocokara」が本格開業目指す

産後間もない母親に体を休めてもらいながら、授乳指導や乳児預かりでサポートするサービス「産後ケアホテル」が、札幌市内で始まりました。産後うつを経験した女性が、本格的な事業化を目指して設立した任意団体「Cocokara(ココカラ)」が11月、第1弾として市内のホテルを間借りして1泊2日で実施し、4組が参加しました。11月月中にもう1回行い、来春からは定期的に実施する考えです。道内での新たな産後ケアのスタイルとして注目されそうです。

24時間体制の託児サービス

産後ケアホテルは、宿泊中に24時間体制で乳児を預かってもらえる安心感を提供します。出産後の心身を整え、毎日の育児からのリフレッシュを図ることを目指し、授乳などの育児全般について指導を受けられることも特徴です。おおむね産後6カ月以内の母子やその家族が対象です。首都圏では専用施設があるなど一定の広がりを見せていますが、関係者によると、道内では初めての取り組みとみられます。

11月14日、北区の無人型ホテル「Ten to Ten(テントテン)」の協力を得て、宿泊用4室のほか、助産師が待機し乳児を預かるための1室を借りて行いました。スタッフはココカラ代表の高橋奈美さん(30)=同市=や助産師4人。交代で乳児の入浴やオムツ替えや寝かしつけをしました。

利用に訪れた谷口さん親子を出迎える高橋さん(左)

「まとまって眠れたら幸せ。きょうは寝たいです」。参加した谷口明莉さん(31)=同市=は、滞在中の希望について話していました。次男の出産から4カ月。長男(2)や夫を含め4人での宿泊です。「夜の授乳のほか、上の子も夜起きることがある」と慢性的な寝不足が一番の悩みでした。

「母乳育児を軌道に乗せたい」と希望した母親には、数時間ごとに助産師が部屋を訪れ、授乳指導を行いました。ココカラ副代表の助産師荒木美里さん(37)は「細かい疑問をメモしてきていた方もいて、それぞれに合った支援ができました」と振り返ります。

「1人の時間を堪能し、心に余裕できた」

母親を癒やすサービスの提供もケアホテルの魅力です。今回はエステやマッサージなどを有料で選べるようにしました。マッサージを利用し、滞在中に次男を預けた谷口さんは「久しぶりにゆっくりできた。上の子と関わる時間も増やせ、1人の時間も堪能できた」と笑顔を見せました。「心に余裕ができ、今後も穏やかに過ごせそう。また泊まりたいし、もっといろいろな人が泊まれるように応援したい」と感想を話していました。

乳児を預かる部屋では、助産師がミルクをあげたりオムツ交換などをした

宿泊後のアンケートには「疲れていると子供をかわいいと思う余裕すらなくなる。リフレッシュできたので、また育児を頑張ろうと思う」「じっくり話を聞いてもらい、すっきりした」「自分をねぎらうことができた」など満足の声が寄せられました。荒木さんは「来た時より帰る時のママたちの表情が緩んでいて、来て良かったと言ってもらった。育児の不安や、休みたいという要望に応えられた」と手応えを感じています。

「ママの救いの場所になる」と起業決意

高橋さんは長女(2)の出産後にうつ状態となり、その時に知った道外のケアホテルの存在に心を動かされました。「産後ケアを受けられる施設はまだまだ少ない。ケアホテルがママの救いの場所になる」と道内での開設、起業を決意しました。今回は、1室に最大4人まで宿泊可能とし、母親の4食(おやつ、夕食、夜食、朝食。家族の食事料金は別)付きで1室3万9500円。利用者からは「家族で泊まれると思うと高くない」との声が聞かれましたが、高橋さんは「多くの人が利用しやすい金額にできるよう、行政からの助成が使えるようになれば」と模索しています。

11月28~29日にも実施。来年3、4月には市内の別の宿泊施設でも行います。ココカラはいずれ法人化し、本格開業します。今後の活動などは、高橋さんのインスタグラムココカラのホームページで紹介しています。問い合わせは、高橋さんのメール(takahashinami.mail@gmail.com)へ。

取材・文/石橋治佳(北海道新聞記者)

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