連載【0カ月からの育児塾】

産後の体に優しい食事 体力回復へ4つの栄養素、成分

出産したばかりの母親の体は、6~8週間かけて内臓の位置などが元に戻ると言われています。出産の疲れを癒やし、授乳を始めるこの時期に、適切な食事を取ってしっかり休むことはとても大切です。育児休業を取る父親にとっても、食事の支度をしたり新生児の世話をしたりと、さっそく正念場です。北海道助産師会会長の高室典子さん(札幌)に、家族みんなで考えてほしい産後の体に優しい食事について聞きました。

産後6~8週間を産褥(さんじょく)期といいます。体の中では内臓の位置だけでなく、妊娠中に増えた女性ホルモンの分泌量が急激に減るなど大きな変化が起きています。労働基準法でも8週間は就業させられないと定めています。妊娠出産という大仕事を終えた母親は、ここで無理をすると体がなかなか元に戻らないので、横になって休むことが大切です。

カルシウム特に大切/常備菜やチーズが便利

この時期、積極的に摂取したい栄養素や成分について、高室さんは《1》タンパク質《2》鉄《3》ビタミンB12《4》カルシウムの4つを挙げます。

タンパク質は筋肉のもとになり、体力回復につながります。大豆製品や肉、魚介類、卵に含まれます。

鉄は貧血対策に欠かせません。出産時の出血などで貧血になる人は少なくありません。体が吸収しやすい「ヘム鉄」はレバーやカツオ、アサリに多く含まれます。調理に手間がかかるイメージがありますが、高室さんは「レバーの塊をめんつゆに入れて火にかけ、スライスすれば簡単に料理に使えます。アサリは水煮缶がお勧め」と言います。ビタミンCやタンパク質と一緒に摂取すると、さらに吸収しやすいそうです。

ビタミンB12は赤血球をつくることにかかわっています。チーズにも含まれるので、冷蔵庫に入れておけば育児の合間につまめます。

カルシウムは、日本人は不足しがちといわれ、産後はさらに意識して摂取する必要があります。「昔からの助産師の教えでは『母乳を1年飲ませると母親の歯が4本なくなる』と言われます。それくらい母乳と一緒に出ていくということ」と高室さん。卵でとじるだけで食べられる木綿豆腐や、日持ちする切り干し大根を勧めます。

高​室​典​子​さ​ん​が​提​案​す​る​産​後​の​体​に​優​し​い​食​事​。​ヒ​ジ​キ​や​切​り​干​し​大​根​を​使​っ​た​常​備​菜​が​お​勧​め​で​す

また、高室さんは甘い物は洋菓子より和菓子と言います。アズキは母乳の分泌を良くし、疲労回復を助けてくれるそうです。一方、エネルギーになる餅や赤飯は昔から母乳の出を良くするとされてきましたが、産後すぐは控えた方が良いとのこと。「赤ちゃんがまだ上手にたくさん飲めず、乳腺も開ききらないうちは母乳が出過ぎて詰まることがある」と注意を促します。

高室さんは「家族の食事について考える機会。夫婦で一緒に料理を」と勧めます。とはいえ、新生児の世話があるので手間をかける必要はありません。献立は米、みそ汁、おかず1品、漬物で十分だそうです。「1日に必要な野菜は350グラム、水分は1.5リットルを少しずつ。具だくさんのみそ汁がお手軽です」

ヒジキとゴボウ、大豆の煮物など常備菜を作り置きするのもお勧め。必要な栄養素を取れて簡単に調理できるのは、肉じゃがやすき焼きです。手が回らない時はコンビニエンスストアなどの総菜が便利。野菜を足して塩分を薄めると良いそうです。

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

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