連載コラム「井澤綾華の働くママごはん」第50回

食べない農業、心を満たす 花作り たくさんの感動

私たちの井澤農園では、タマネギやカボチャの植え付けが順調に進み、残りはサツマイモのみ! サツマイモは苗作りと定植を同時に進行させるため、苗を切っては植え、切っては植えと、他の作物と比べて時間が多くかかっています。

農家と聞くと、野菜やお米を生産しているのを真っ先に思い浮かべるかもしれません。実際には、「食べない農産物」を作る農家も多く存在します。

品目で言うと、切り花や鉢花、芝生、観賞用のカボチャなど。種や苗を作る農家もいます。北海道では育ちませんが、畳の材料であるイグサや、かやぶき屋根に使う「かや」、祭事に使われるサカキなども農家が生産しています。

井澤農園の場合、花苗を生産しています。農業を営む家の男性と結婚した私はそれ以前、農家というと食べ物を作るのが仕事と思っていました。だから当初、「花の苗の直売所も自分たちでやっている」と聞いてもピンときませんでした。

雪解け間近の頃、農場のビニールハウスの扉を開けた瞬間の花の香りの素晴らしかったこと。まだ周囲の風景に緑がほとんどない時期に、目に入った咲き始めの花の色が鮮やかだったこと。次々と新鮮な体験をしながら、ヨメとして慣れない仕事に携わったことを思い出します。

同じ品種の花でも少しずつ色が違い、一株の花でもグラデーションを作りながら咲くといったように、花を育てる工程には感動がたくさんあります。

実を言うと、結婚前、ガーデニングにはあまり関心がありませんでした。現在、花が見せる日々の変化に心を満たされてます。

食べない農業も生活を彩る尊いものですね。わが家の就学前の子どもたち3人は、花の直売所にお友達家族が来てくれると大喜び!「きれい! かわいい!」とお友達が感動してくれたら得意げになります。わが子なりに「食べない農業」の特別感を味わっているのかなと想像しています。

教えてくれたひと

井澤綾華

管理栄養⼠

天使⼤(札幌)を卒業後、2016年に空知管内栗⼭町地域おこし協⼒隊員に。17年、町内で農家を営む孝宏さんと結婚。22年1月、3人目の子どもとなる次男が誕生した。フェイスブックで野菜のレシピなどを発信中。札幌市出身。

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