連載【0カ月からの育児塾】

授乳の悩みと対応方法(下)ミルク編

写真はイメージ(hirost / PIXTA)

ミルクは、産後すぐに職場復帰したり、母乳が出にくかったりするお母さんにとって心強い「味方」です。ただ「一度にたくさん飲むので太るのでは」「増やし方がわからない」と悩む方もいます。北海道助産師会会長の高室典子さん(札幌)は「母乳は赤ちゃんが自ら必要な量を飲みますが、ミルクの場合は赤ちゃんの体重や発育に合わせて授乳量を調整することが大切」と話します。

缶の表示を目安に 残しても焦らないで

ミルクは加工した牛乳が主成分で、赤ちゃんが成長するために必要な栄養が含まれています。メリットはお母さんの負担を軽くできることです。産後の体にとって、母乳による授乳は「かなりの重労働」と高室さん。ミルクの授乳はお母さん以外の人もできるので負担を軽くできます。

相談で最も多いのが、成長に合わせた増やし方です。母乳に比べて一度に多くの量を飲むため、授乳回数は1日に7~8回(4カ月以降は1日5~6回のことも)です。基本は赤ちゃんの体重を把握し、ミルク缶に表示されている目安の量を調乳します。

ミルクが足りないと、1日のおしっこが6回以下、毎日うんちが出ない―といったことが起きます。こうした場合には、少しずつ増やしましょう。1回80ミリリットルを毎回100ミリリットルにすると多すぎるので、朝晩だけ100ミリリットルにするなど様子を見ながら増やします。

高室さんは「ミルクを飲まなかったり残したりしたら、無理に飲ませなくてかまいません」。遊ぶうちに機嫌が良くなったり、おなかがすくことがあるので焦らないことです。飲まないことが続いたり、気になることがあったりする場合には、助産師や小児科などで相談してみてください。

一方、育児が初めてのお母さんの中には、一度に多くの量を飲むから太るのでは、と心配する方もいます。授乳回数を減らしたり、規定量よりミルクを薄めたりする方もいました。高室さんは「規定度より濃かったり薄かったりすると、赤ちゃんの腎臓に負担がかかります」として、規定量を守るよう呼び掛けます。
哺乳瓶は主に耐熱性ガラスとプラスチック製で、一長一短があります=グラフィック=。用途に合わせて選んでください。

哺乳瓶の選び方

新生児のころは煮沸などで哺乳瓶や乳首を消毒しましょう。1カ月を過ぎたら、赤ちゃんはものをなめたりするため、哺乳瓶だけを消毒しなくても良いです。洗剤は使わず、お湯で洗いましょう。

横抱きで声かけを 抱きしめてあげよう

ミルクをあげる際は赤ちゃんの首の後ろを手で持たず、横抱きの姿勢で飲ませます。お母さんが腱鞘炎(けんしょうえん)になるなどして寝かせて飲ませる際は、バスタオルを敷くなどして赤ちゃんの頭を高くします。

赤ちゃんに声をかけ、上唇をつついて口が開いたら、哺乳瓶の乳首を含ませてください。ポイントは口に対し垂直に哺乳瓶を持つこと。乳首がミルクで満たされ、空気が入りません。

ミルクを飲んだら、嘔吐(おうと)を防ぐためにゲップをさせましょう=グラフィック=。ゲップが出ない場合、あおむけに寝かせるとミルクを吐いた時に飲み込む危険があるので、横を向いて寝かせてください。授乳クッションを背中に置いても良いです。

ゲップのさせ方

話しかけたり手を握ったりしながら、授乳をすることは「すごく大事な赤ちゃんとの絆」と高室さん。母乳を病院で推奨されたりすると、ミルクを選んだことも後悔する方もいますが、大事なのは抱きしめて授乳すること。高室さんは「赤ちゃんに思いは通じます」と話します。

ミルクの作り方や選び方などについてはこちらの動画で詳しく解説しています。

取材・⽂/田口谷優子(北海道新聞記者)

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