連載【0カ月からの育児塾】

授乳の悩みと対応方法(上)母乳編

写真はイメージ(hirost / PIXTA)

授乳は、赤ちゃんへの最初のお世話です。ただ、母乳でもミルクでも量が足りているかなど、悩むお母さんは少なくありません。北海道助産師会会長の高室典子さん(札幌)に、授乳をテーマに2回にわたって話してもらいました。今回は母乳育児に関する悩み、次回(3月3日)はミルクの飲ませ方です。

乳頭を吸わない場合・・・授乳姿勢を見直す

高室さんは「母乳の量が安定するのは、生後2週間ごろから。最初のうちは母乳が出ないと焦らないで」と呼び掛けます。

授乳姿勢が悪い場合、赤ちゃんが乳頭を吸わなかったり、嫌がったりすることがあります。主な姿勢は「横抱き」と「添え乳」です。横抱きでは腕で赤ちゃんの背中からお尻までを支え、赤ちゃんをお母さんの方に向かせ、添え乳では高めの枕を使いましょう。

赤ちゃんが吸わないからといって、首をつかんで自身の胸に押しつけることはやめましょう。

授乳後も泣く場合・・・母乳が足りているかを判断する

授乳後10分以内に泣く時は「もう一度授乳を」と高室さん。まだ飲みたかったり、胸で眠りたいと伝えたりしている場合があります。生後3週間ごろは体が急激に成長する時期で、授乳してもすぐに空腹になり、泣くこともあります。

一方、1日のおしっこの回数が6回以下だったり、うんちが3日に1回しか出なかったりしたら、母乳不足なので授乳回数を増やしてください。生後1カ月以内までは、1日10~12回は授乳します。ミルクを足す際には、多くても40~60ミリリットルにしてください。足しすぎると、満腹で母乳を飲まなくなることがあります。

乳頭が切れて痛い

乳頭が切れて痛い

赤ちゃんの口が、お母さんの乳首に対して斜めになっていると、乳頭の一部に負担がかかって切れてしまいます。高室さんは「痛い時は我慢せず、赤ちゃんの口が乳頭を正面から吸うように方向を変えて」。

切れた乳頭をケアするには、10センチ四方に切ったラップを乳頭に貼り付け、搾って母乳を出します。母乳には抗生物質の成分が含まれている上、乾燥も防げます。亀裂がひどくなったら、羊や馬の油など口に入っても安全なクリームを、乳頭に塗ってラップをすることがお勧めです。

母乳不足が心配

赤ちゃんが泣く理由を母乳が足りないからと思い込む人もいますが、空腹だけでなく「眠たい」「不快」などさまざまです。赤ちゃんの体力が余っていて、泣いて発散している時もあります。
着替えやおむつ交換をするなど、泣く理由を探ってみてください。それでも分からない場合は、保健センターや助産師に相談してみましょう。

母乳育児を続ける上で、大事なことはお母さんの「セルフケア」です。授乳中は前かがみになるため、上半身の血流が悪くなりやすい。背中を伸ばしたり、自身で胸を左右に動かすなど、血の巡りを良くするよう心掛けましょう。高室さんは「おっぱいを揺らして、サンバを踊っても良いです」と、ケアを楽しむコツも語ってくれました。

動画では、お母さんへの負担が少ない授乳姿勢をくわしく説明しています。

取材・⽂/田口谷優子(北海道新聞記者)

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