子どもの窒息事故、家庭で防ぐには 専門家に聞く

写真はイメージ(polkadot / PIXTA)

子どもは大人に比べて食べ物による窒息を起こしやすく、死に至るケースもあります。2月には、福岡県みやま市で小学1年の男子児童が給食をのどに詰まらせて死亡しました。ウズラの卵が原因とみられています。窒息事故を防ぐため、家庭ではどんなことに注意したらいいのかを専門家に聞きました。

消費者庁によると、2014~19年に食品で窒息した14歳以下の子どもは80人。このうち5歳以下が73人と9割を占めています。原因となった食品は、0歳児ではミルクなどの乳、1歳以上は菓子や果物、肉・魚などが多いです。

食材は小さく切り、飲み込みやすく

    

食品による窒息は、のどや、その奥の気管に食べ物が詰まることで起きます==。日本小児科学会によると、子どもで窒息が起きやすいのは、食品と子どもの双方に要因があります。

窒息しやすい食品の形状・特性は、①丸くてつるっとしている②粘着性が高く、飲み込みづらい③硬くてかみ切りにくい―などがあります==。

天使大学の西隆司教授(食品科学)は「プチトマトやブドウ、ウズラの卵などは、口の中で触れる面積が少なく転がりやすい。前歯でかじらず奥歯でかもうとするため、そのまま滑ることがある」と話します。肉や生のニンジンなどはかみ切れず、そのまま飲み込んでしまう危険性があります。

対策は、小さく切って食べやすくすることです。例えばプチトマトやブドウは、4分の1以下にします。繊維質のある牛肉や豚肉は厚切りだとかみ切りにくいため、かみ切れる薄さに切ります。

餅やご飯などの粘りがある食品は、ばらばらになりにくいため固まりのまま飲み込む可能性があります。パンも唾液を吸うと張り付きやすくなります。

西教授は「かみ切れないなどして飲み込めない時は無理に飲み込まないで口から出すこと、パンは小さくちぎるなどして食べるよう子どもに教えておくと良い」と助言しています。「切らずに食べても大丈夫な時もあるが、いつもそうとはかぎらない。小学校に入るまでは特に気をつけてほしい」と話していました。

しっかりかみ、ゆっくり食べる習慣を

小さい子どもはかむ力が弱く、かまずに食べてしまうことがあります。かむ力があっても、ふざけていたり早食いしたりして、十分にかまず飲み込んでしまうことがあり、窒息事故が起きやすいです。

かむ力は、1歳半ごろに離乳食が完了しても十分ではありません。大人に近いそしゃくは3歳ごろに身につきますが、うまく飲み込んだり吐き出したりできるようになるのは6歳ごろとされています。

消費者庁は、硬くかみ砕く必要がある豆やナッツ類について、以前は3歳以下に与えないよう周知していましたが、死亡事故などの調査を踏まえ、21年から5歳以下に引き上げています。

小学校低学年では、永久歯への歯の生え替わりの際にそしゃくがしにくかったり、食べるのに時間がかかったりすることもあります。

嚥下(えんげ)に詳しい北海道医療大学病院の木下憲治歯科医師は「ヒトは食道と気管の入り口が近く、構造的に窒息しやすい。家庭でしっかりとかみ、ゆっくり食べることを習慣づけることが重要」と話しています。

福岡の窒息事故を受け、道教委や札幌市教委は小中学校などに対し事故防止の通知を出し、給食の安全な食べ方を指導することや事故が起きた際の応急手当の方法を再確認するよう求めました。

詰まった時、どう対処

子どもが食べ物などを詰まらせた時の対応を、日本赤十字社北海道支部(札幌)の永沢貴博さんに聞きました。

119番し、意識がある場合は食べ物を吐き出させます。方法は大きく分けて①頭を低くして背中をたたく背部叩(こう)打法②腹部や胸部を圧迫する突き上げ法があります。

①は顔を下向きにして頭を低くします。片手で胸を支え、後ろから背中の真ん中(肩甲骨の間)を手のひらの付け根でたたきます=背部叩打法=。乳児でも可能です。

背部叩打法

背部叩打法

②は拳を作った片手を後ろからへその位置に合わせて置き、その上にもう片方の手を置いて上に引き寄せて腹部を圧迫します=腹部突き上げ法=。体が小さい乳児は、あおむけにして胸部を片手で押します=胸部突き上げ法=。

腹部突き上げ法

腹部突き上げ法

胸部突き上げ法

胸部突き上げ法

意識がなくなった場合は、心肺蘇生をしながら救急車の到着を待ちます。

取材・文/石橋治佳(北海道新聞記者)

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