連載【0カ月からの育児塾】

マタニティブルーの原因や乗り越えるポイントは? 産後うつとの違いも解説

写真はイメージ(buritora / PIXTA)

産後、気持ちが落ち込むなど精神が不安定な状態を「マタニティブルーズ」と言います。どの女性もなる可能性があり、乗り越えるには、周りの理解やサポートが大切です。北海道助産師会会長の高室典子さん(札幌)に、マタニティブルーズになる原因や対処法、産後うつとの違いについて教えてもらいました。

ホルモンの変化、ほとんどは自然改善

症状としては、気持ちの落ち込み、不安に襲われる、急に泣きたくなる、小さなことにイライラする、感情をコントロールできないなどが挙げられます。一時的に、不眠や過食、拒食、動悸(どうき)や息切れ、頭痛に悩まされるケースもあります。

マタニティブルーズになる原因の一つに、ホルモンバランスの変化が考えられます。出産をすると、それまで妊娠状態を維持しようとしていたホルモンの分泌が減少。こうした体の変化のほか、寝不足や出産で体力が落ちたことなどにより気持ちが変化するとされています。食事や睡眠時間が赤ちゃん中心となり、生活環境が一変することで、症状が出る人もいます。

高室さんによると、お産をした人の30%から50%くらいが経験するそうです。「どんな人でもなりやすい」(高室さん)とされ、特に、生理前に頭痛や抑うつ状態などの症状が出る「月経前症候群」(PMS)の人や、真面目な人がなりやすいと言われます。

マタニティブルーズは、1~2週間で自然に改善し、1カ月ほどたつと治る人がほとんどです。もしそれ以上長引けば、産後うつと診断されることがあります。2週間以上持続し、自然に改善することが難しく、病院で治療を受ける必要があるのです。

マタニティブルーズを乗り越える5つのポイント

マタニティブルーズを乗り越えるには「やり過ごすことが大事」と高室さん。考え方を上手に切り替えて乗り切る5つのポイントを紹介します。

マタニティブルーズを乗り越える5つのポイント

1つ目は、感情を素直に出すこと。高室さんは「自分の感情を出すことが難しいという人もいますが、『こんな気持ちでつらい』と周りに話すことが大事」と強調します。

2つ目は、体を休めて十分に睡眠を取ること。夜間の授乳などで、まとまった睡眠時間が取れない生活が続くと、気持ちも落ち着かなくなります。入院中なら、看護師さんらに「何時まで眠らせてください」と頼み、赤ちゃんを預かってもらいましょう。

3つ目は、自覚すること。マタニティブルーズの原因はお産です。ホルモンが変化したので、そういう状態なんだと自分に教えてあげてください。

4つ目は、運動すること。体を動かしてストレスを解消し、血の巡りを良くして休むと体調が戻ってきます。育児は、授乳など前かがみの姿勢が多いため、肩を回すなどして、体をほぐしましょう。

産後体操

5つ目は、相談すること。パパや周りのお母さんでもいいし、専門家でも良いでしょう。病院なら、看護師さんや助産師さん、お医者さんもいるので、話を聞いてくれそうな方に、相談してみてください。高室さんは「『みんなにあることだよ』と教えてくれたり、どうしたら良いかを一緒に考えてくれたりすると思います」と助言します。

産後うつに移行すると、何も手に付かなくなったり、やる気が起きなくなったりして、体や生活全般により深刻な影響が出かねません。その前の、マタニティブルーズの段階で周りの人たちも理解し、気付いて支えてあげてください。高室さんは「頑張っているお母さんにねぎらいの言葉をかけてあげて」と言います。

動画では、マタニティブルーズを乗り切るコツや簡単にできる体操を紹介しています。

取材・⽂/田口谷優子(北海道新聞記者)

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