連載コラム「瀬川院⻑のすくすくカルテ」第44回

妊娠中の服薬、予防接種に影響は 生後6カ月以内は注意

Q.質問

不妊治療を受けて受精卵への拒絶反応を抑制するため、妊娠中もタクロリムスという免疫を抑える薬を飲んでいました。赤ちゃんは無事産まれましたが、妊娠中に飲んだ薬の影響で、赤ちゃんに接種できないワクチンがあると聞きました。どういうことなのか教えてください。

A.回答

ワクチンには、ウイルスや細菌の毒性を弱めた「生ワクチン」、毒性を完全になくした「不活化ワクチン」、毒素の毒性をなくして免疫を作る働きだけにした「トキソイドワクチン」、タンパク質の遺伝情報を使う「メッセンジャーRNAワクチン」があります。このうち生ワクチンは、赤ちゃんの免疫機能が極度に低下していると、重い副反応が生じる場合があります。

妊娠中の母親はさまざまな病気の治療のため、免疫抑制薬や、遺伝子工学の技術で作られた「生物学的製剤」などの薬を飲むことがあります。これらの薬は胎盤を通じて胎児に移行し、出生後、赤ちゃんの免疫の働きを抑える可能性があります。特に薬の影響が残る生後6カ月以内の生ワクチン接種には、注意が必要です。

生後6カ月以内で接種する生ワクチンには、ロタウイルスワクチンとBCGがあります。BCGは生後6カ月以降も接種できますが、ロタウイルスワクチンは副反応の関係から、生後15週未満に初回の接種を行う必要があり、薬の影響に関して一番問題になると思われます。

ご相談のタクロリムスという薬は出生後、数週間経過した時点で赤ちゃんへの影響は少なくなっているとされ、ロタウイルスワクチンの接種は制限しなくてよいでしょう。2020年の報告では、妊娠中に免疫抑制薬を内服した母親から生まれた24人の赤ちゃんにロタウイルスワクチンを接種し、有害な反応はなかったといいます。

なお、生物学的製剤を妊娠中期以降も内服した場合は、生後6カ月を超えるまで生ワクチンは原則禁止です。妊娠中の服薬による赤ちゃんへの影響はさまざまなので、主治医に相談されるとよいでしょう。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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