出産支援、恵庭で続々 「負担減り安心」妊産婦歓迎

救急用にバスタオルなどを常備している島松ハイヤーのタクシー

救急用にバスタオルなどを常備している島松ハイヤーのタクシー

【恵庭】出産に対応する産科医療機関がない恵庭市内で、市外の病院に通う妊産婦を支援する動きが本格化している。市消防本部とタクシー会社は8月から、陣痛時に医療機関に向かう妊婦にタクシーを優先配車する「マタニティータクシー」制度の整備に着手。市も本年度、市外への通院にかかる交通費の一部助成を始めた。妊産婦からは「身体・経済的な負担が減り、安心できる」と期待の声が挙がっている。

陣痛時にタクシー優先配車へ/市、市外への通院費一部助成

市保健課によると、市内の出生数は2019年度415人、20年度434人、21年度455人と増加傾向にある。市内には妊娠定期健診を行う民間医療機関が1カ所あるだけで、21年度に市内の妊産婦が出産した医療機関は札幌市が半数で、千歳市が4割という。

こうした実態を受け、市消防本部は8月、恵庭市内でタクシー事業を行う島松ハイヤー(恵庭)、富士交通(恵庭)、千歳交通(千歳)の3社と「恵庭市消防安全・安心パートナー制度」を締結。マタニティータクシー制度の整備に向けて連携することを決めた。

マタニティータクシーは、妊婦が事前に出産予定日やかかりつけ医の情報などをタクシー会社に登録し、陣痛時に優先配車される仕組み。対応する車両には、妊産婦の破水時に必要なバスタオルや防水シートなどを置く必要がある。札幌市や函館市では既に導入されている。

恵庭市消防本部は今後、SNSなどでマタニティータクシーの利用を呼び掛けるといい、「市内は転入者も多く、不安な妊婦は多い。安定した救急体制の維持にもつながる」と説明する。

こうした動きに対し、11月に出産を予定している市内の主婦平間優里さん(24)は「いつ陣痛があるか分からず不安なので、安心できる」と歓迎する。

一方、市は4月から、市外の医療機関で妊産婦健康診査を受ける女性に対し、交通費の一部を助成する事業を始めた。1回千円の助成で、上限は妊婦健診14回、産婦検診2回、出産時1回。市保健課は窓口で申請書を手渡して周知した。8月までに対象者の7割が利用しており、利用者からは「経済的に助かる」と声が聞かれるという。

ただ、市民の間では「市内で産める環境があれば地元で産みたい」「分娩(ぶんべん)はできなくても夜間に駆け込める産婦人科を開設してほしい」との声が根強い。産科医療機関の誘致が課題となるが、市保健課は「全国的な産科医の不足で具体的な誘致の動きはない。今は市外に通院する妊婦の支援に力を入れていきたい」と話している。(中川渚)

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