幼児の転落防止、窓に補助錠を 札幌で死亡事故相次ぐ 専門家「見守りだけでは限界」

写真はイメージ(yamasan / PIXTA)

札幌市内で幼児が自宅の窓から誤って転落し、死亡する事故が相次いでいる。9月下旬にはマンション9階から4歳男児が、4月にも住宅の3階から3歳男児がそれぞれ落下し、亡くなった。同市消防局によると、市内では2016年以降、窓やベランダからの転落で、5歳以下の計46人が救急搬送されている。新型コロナウイルス禍で子供が自宅にいる時間が増える中、専門家は「事故は、大人の見守りだけでは防げない。補助錠の設置など、施設面の対策が必要」と訴える。


道警によると、札幌市白石区内のマンションで9月23日夜、男児が9階の子供部屋の窓から約25メートル下に落ちた。窓には備え付けの柵があり、床から柵の上部までの高さは約120センチ。周囲に足がかりになる物はなかった。両親は当時、別室におり、男児は自ら柵を登ったとみられる。4月に札幌市清田区内の住宅3階から男児が転落死した事故では、3階の窓の近くに折り畳んだ布団があり、男児は布団に登り、窓から落ちた可能性が高いという。

同市消防局のまとめでは、こうした転落事故で搬送された5歳以下の子供は16~20年で計40人。今年は8月までで、清田区の事故の1人を含む計6人に上る。

目立つ3、4歳

転落が命にかかわる危険は高い。東京消防庁の統計では、都内で15~19年に搬送された5歳以下の70人中、軽傷にとどまったのは10人。残りは入院が必要なけがだったり、亡くなったりした。2階からの転落でも、約8割は入院が必要と診断された。年齢は3、4歳児が目立った。

「子供は大人の想像を超えた行動をする。まさかという気持ちだった」。札幌市手稲区内で6月の早朝、4歳女児が自宅アパート4階から落ちて重傷を負った事故で、女児の父親はこう振り返った。落ちた場所は草地だったため、女児は一命を取りとめた。当時は家族で就寝中で、女児は家具を登り、大人の胸ほどの高さにある小窓からベランダへ。さらにベランダの避難はしごを登り、手すりから落ちたとみられる。両親は女児の泣き声で転落に気付いた。小窓は高さがあるため無施錠だったという。

子供の事故防止を研究する産業技術総合研究所(茨城)の大野美喜子研究員は「事故があると『子供から目を離したから』と考えがちだが、ずっと見守るのは不可能。事故は一瞬で起きかねず、見守りだけでは防げない」と強調する。

簡単に壁登る

建築基準法は、ベランダの手すりの高さは110センチ以上と定める。ただ、同研究所などによる検証実験では、4歳児の8割超が高さ110センチの壁を11秒ほどでよじ登った。足がかり無しで登った子もいたという。

子どもの転落事故を防止するポイント

予防に有効なのは、窓の上部に補助錠を付けることだ。子供の手の届かない位置に付け、窓を開かなくしたり、開く幅を制限したりする。補助錠はホームセンターなどで購入できる。柵の設置は、子供がよじ登って柵を乗り越える恐れがあり、高さや形状に注意が必要という。消費者庁は、転落事故は子供が歩けるようになる1歳ごろから警戒が必要とし、対策=イラスト=を呼び掛けている。(磯田直希、松下文音)

この記事に関連するタグ

Area

北海道外

その他