乳幼児のスマホ利用、視力低下や依存を防ぐ家庭のルール作りが大切〜依存チェックリストも〜

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乳幼児の子育てにスマートフォン(スマホ)を活用する保護者は少なくありません。コロナ下で自宅にいる時間が長くなり、手軽にお気に入りの動画を見せられるなど便利な半面、視力低下や依存への懸念もあります。

「スマホとのつきあい方に悩み、考えた7年でした」。函館市の30代主婦は振り返ります。長女(7)が11カ月の時からスマホを見せていました。車のチャイルドシートを嫌がった際、スマホを渡すと泣きやんだことがきっかけでした。

長女は2歳の時には動画を1日2~3時間見ており、見せないと泣き叫ぶ中毒のような状態に。このため、4歳の時に数カ月がかりで「スマホ断ち」をしました。主婦は「ルールを作るなどバランスを取れたらよかった」と悔やんでいます。

内閣府の青少年のインターネット利用環境実態調査によると、2018年度の0~9歳の利用率は57%で、1日の平均利用時間は88分。21年度の利用率は74%で、平均利用時間は110.2分に伸びました。

時間制限などルールが必要

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東京女子大現代教養学部教授で、スマホ問題に詳しい橋元良明さん(67)はコロナ下で保育施設の休園や保護者の在宅勤務が増えた結果、「子どものスマホ利用時間も増えたのでは」とみています。その上で「スマホは子どもにとって好きな動画などを見られる『魔法の道具』ですが、依存すると日常生活に支障が出てきます。保護者が長所と短所を理解し、ルールを設けて使うべきです」と話します。

橋元さんによると、長所は《1》情報機器への適応力が付く《2》膨大な知識に接触できる―で、短所は《1》視力低下《2》依存―などです。スマホに依存するようになると、朝起きられないなど生活リズムが乱れたり、親の言うことを聞かなくなったりするといいます。

橋元さんはスマホの利用時間が長い場合、依存になっていないかどうかを確認するよう勧めます。「時間制限を設けるなど、利用方法に注意を」と呼び掛けています。

乳幼児のスマホ依存チェックリスト

道内園児の視力に悪影響?

「1.0未満」が過去最多

北海道教育委員会が道内の公立小中学校や幼稚園、認定こども園などを対象に行った2020年度学校保健調査によると、視力が1.0未満の園児の割合は35.97%で、過去最悪でした。

コロナ下で利用増

札幌市内の小中学校で眼科の学校医を務める「ひきち眼科」(札幌市北区)院長の引地泰一さん(61)は「乳幼児期からのスマホなどの利用や、コロナ下で利用時間が増えたことが影響したのでは」とみています。

スマホは画面が小さく、目から近い距離にピントを合わせます。引地さんは「長時間近い距離を見る行為は、ピントを調整する筋肉に負荷がかかり、近視になりやすい」と説明します。

8歳から10歳ごろまでに、眼球は大人並みに成長するため「就学前のスマホ利用は目への影響が大きい」(引地さん)。利用する際は《1》目から30cm以上離す《2》時間を制限するーことなどが大切といいます。

「見せたことある」9割〜mamatalkアンケートより〜

「mamatalk(ママトーク)」が未就学の子どもがいる保護者を対象にアンケートした結果、9割が乳幼児にスマホを見せた経験がありました。

調査は11月2~13日にウェブで行い、20~40代の61人が回答しました。

乳幼児とスマホの関係〜ママトークアンケートより〜

見せたことがあるのは55人(90%)で、うち35人(64%)が視力低下など「目への影響」を心配しています。このため「30分以内と時間を決めている」(札幌市の20代女性)、「15分程度にとどめている」(旭川市の30代女性)など、時間を限って利用する家庭が多かったです。

使う場面(複数回答)は「店舗や診察などでの待ち時間」が最多の31%で、「子どもが見たがった時」20%、「保護者が家事や仕事をする間」16%―と続きました。

見せたことがないのは6人(10%)で、理由は「癖になる」「集中力が低下しそう」などです。空知管内由仁町の40代女性は「自分で考えて遊んだり行動したりする機会を増やしたい」としました。

取材・文/田口谷優子(北海道新聞記者)

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