診察や会計 個室で安心 小児科 患者同士接触避け院内感染防止

「おたるこどもクリニック」の個室で、院長の飯田純哉さん(右)の診察を受ける患者の子どもと保護者=小樽市(玉田順一撮影)

新型コロナウイルスに感染する子どもが増え、保護者の感染対策への意識が高まるなか、受診や会計を個室でできる小児科のクリニックが注目されています。患者同士の接触を避け、院内感染を防ぐ効果が期待できます。一方、個室を設けるための広いスペースが必要で、個室を移動しながら診察する医師の負担もあり、個室対応の普及には課題があります。全国的にも多くありません。

広いスペース必要/医師の移動 負担に

4月に開業した「おたるこどもクリニック」(小樽市)は七つの個室を備えています。個室の広さは1室当たり6~11平方メートル。室内にはベッドと椅子、机があり、空調も完備しています。

「1番(の部屋)へどうぞ」―。8月中旬、小樽市の看護師、沢田涼子さん(35)は風邪症状のある1歳と4歳の息子を連れて、おたるこどもクリニックを訪れました。個室に通されて待っていると、院長の飯田純哉さん(36)が電子カルテの入ったパソコンを載せたワゴンを引いて個室に入ってきました。

「コロナ心配」

診察を受けた沢田さんは「ほかの患者さんから病気をもらう心配がなく、安心です」と歓迎します。

また、生後2カ月の一颯(いぶき)ちゃんの予防接種で来院した小樽市の主婦、山田桃子さん(31)は「赤ちゃんが待合室でコロナに感染しないか心配で、個室対応の評判を聞いてクリニックを選びました」と話しました。

飯田さんは、個室での受診について「コロナ下でも安心して来院できるように考えました」とのことです。その一方で「個室間を移動し続けるのは大変」とし、医師側のデメリットについても説明しました。

飯田さんが開業する際に参考にしたのが、個室制を2010年から採用している札幌市豊平区の「おひげせんせいのこどもクリニック」です。

院長の米川元晴さん(47)は、東京の小児科外来で勤務していた際、受診を待つ間に別の疾患に感染してしまった患者を診てきました。治りかけのときに別の病気にかかってしまう状況を改善しようと考えました。その結果、「患者全員を隔離する結論に至った」と話します。

全国から視察

診察室は9室あり、全国から小児科医が視察で訪れます。個室での受診は、落ち着いて座っていられない子や、診察のやりとりを聞かれたくない患者にも利点があるとします。米川さんは「個室スタイルの良さを広く発信していきたい」と強調します。

日本外来小児科学会の医師有志でつくるオープンクリニックネットワーク代表を務める池沢滋(しげる)さん(57)によると、小児科外来は3つのタイプに分かれる。《1》診察室、待合室、処置室で構成する昔ながらの診療所《2》感染室をいくつか設置する診療所《3》一般診察用、感染者用、予防接種用のスペースを分ける診療所―だということです。

注目されてきた個室での診察は《3》が発展したスタイルです。詳しいデータはありませんが、全国の小児科外来のうち、個室制は1割にも満たないと推察されます。

池沢さんは「コロナ下で患者のマイカー内での診察や、待ち時間短縮のためにウェブ問診票を導入した診療所もあります。子どもと感染症は切り離せません。院内感染を防ぐ模索は、さまざまな形で今後も続くのではないでしょうか」とみています。

取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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