糖の代謝異常「妊娠糖尿病」と診断されたら 産後含め血糖管理大切

写真はイメージ(Ushico / PIXTA)

妊娠で血糖値が下がりにくくなり、高血糖状態になる「妊娠糖尿病」。糖尿病には至らない糖代謝異常のことです。妊婦の約1割に見つかり、最近は高齢出産の増加で患者も徐々に増えているとみられます。出産すると治ることが多いですが、将来、本当の糖尿病になりやすい傾向があります。母体のほか胎児に影響する懸念もあり、専門家は妊娠中にしっかりと血糖をコントロールすることの大切さを強調しています。


妊娠糖尿病は、妊娠判明後の血糖の検査などで、一定の基準を超えた場合に診断されます。 平松祐司日本糖尿病・妊娠学会理事長(岡山大名誉教授)によると、日本の多施設共同研究で厳密に測定した結果、妊婦の12%に見つかりました。現行の検査方法では7~9%、10万人程度が該当します。

妊娠糖尿病とは

妊娠で血糖が上がるのは、胎盤などから分泌されるホルモンにより、血糖を抑えるインスリンの効きが悪くなるため。妊娠糖尿病は「両親や祖父母ら血縁者が糖尿病」「肥満」「35歳以上」―などの女性はリスクが高いといいます。 妊婦の血糖が高いと、胎盤を通じて胎児に糖が過剰に運ばれ、胎児が巨大児になって難産や帝王切開の可能性が高まり、出生後の赤ちゃんが低血糖を起こす例もあります。平松理事長は「出産までの厳格な血糖コントロールが大事。内科と産科、その他の医療職が連携して支える必要がある」と強調します。

上手に栄養を摂取 定期的な受診、検査を

治療の基本はまず食事療法です。国立成育医療研究センター母性内科の荒田尚子医長は「食事の“制限”と考えず、上手に栄養を取る方法を学ぶ機会と捉えて」と呼びかけます。管理栄養士の鴨志田純子同センター副栄養管理室長は「真面目な女性ほど、ご飯を一切食べないなど極端な食事制限に走ることがある。必要な栄養が足りず、胎児の成長にも支障がある」と言います。

食事の栄養バランスは、エネルギー(カロリー)換算で炭水化物が50~55%、タンパク質20%、脂質20~25%が目安ですが、適切な摂取カロリーの総量と併せて専門家の指導を受けた方がいいです。ご飯もしっかり食べるのが基本になります。

数値が高かったり、管理が難しかったりすると薬が必要となります。血糖に応じて必要な量のインスリンを自分で注射する方法を学びます。

平松理事長は、妊娠中だけでなく、妊娠前と出産後の血糖管理が大切だと言います。「妊娠前に高血糖の治療をすれば、母体や胎児のリスクは健康な妊婦と変わらない。妊娠の予定があるなら自分の血糖を調べてもらい、高いと言われたら治療を受けた上で計画妊娠することが望ましい」としました。

出産後はホルモンの関係でいったんは血糖が下がるものの、その後の糖尿病リスクは高いです。妊娠糖尿病になった母親は5年で約20%、10年で約30%が糖尿病になるとの厚生労働省研究班の報告があります。定期的な受診、検査が勧められます。

取材・文/岩本進

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