認定外利用90人 道内19年度 新出生前診断 認定施設減少208人

妊婦の血液から胎児の染色体異常の可能性を調べる「新出生前診断(NIPT)」を、学会の指針に反して2019年度から実施する道内の認定外1施設で受けた妊婦が1年間で約90人だったことが、北海道新聞の取材で分かった。一方、道内の認定施設で19年度にNIPTを受けた妊婦は検査が始まった13年度以降で最少の208人だった。関係者は「認定外施設に相当数が流れている」とみている。


認定外施設は、札幌市内の自由診療専門クリニックで、東京都内の「平石クリニック」(平石貴久院長)の委託を受け、採血のみを実施。血液は海外の分析施設に送られ、結果は妊婦にメールで伝えている。関係者によると、昨年4月から3月末までに約90人が受検し、現在も月10~20人の予約が入るという。

NIPTは確定診断ではないが、採血のみで高い精度で染色体異常の可能性が分かる。「産むか産まないか」の重い決断につながるため、日本産科婦人科学会(日産婦)など関連学会は指針を定め、専門家による遺伝カウンセリングを行う体制が整った病院でのみ実施を認めてきた。認定施設は現在、道内2施設を含めて全国109施設。ただ、指針に強制力はなく、16年ごろからカウンセリングが不十分な認定外施設が急増。妊婦のケア不足につながるなど、全国で問題となっている。

道内の認定施設である北大病院と札幌医大病院の受検者数は減少傾向にあり、19年度は前年度から26人減少。最多だった13年度と比べると約80人減った。北大病院の河口哲医師は「問い合わせ件数も減少しており、道内でも認定外の利用が広がりつつある」と警戒感を示す。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

新出生前診断

妊娠10週以降の早い時期に、妊婦の血液に含まれるDNA断片を解析し、胎児の3種類(13、18、21番)の染色体異常の可能性を調べる検査。確定診断には羊水検査が必要。日産婦の指針に基づき、対象は原則35歳以上、過去に染色体異常の子を妊娠した妊婦など。日本医学会が認定する施設で臨床研究として開始し、18年度までに全国の認定施設で7万人以上が受けた。

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