インフルエンザやプール熱… 感染症 子どもに同時流行

受診のため、次々と親子連れが訪れた、ふるた小児科クリニック(畠中直樹撮影)

時季に変化 予防対策急務

インフルエンザや咽頭結膜熱など、子どもを中心に感染症が流行し、この二つは警報レベルに達しました。新型コロナウイルスの予防対策の影響で、流行時季が大きく変化する中、小児科は診察とワクチン接種に追われています。

「喉は痛くない?」「もしもししようか」。ふるた小児科クリニック(札幌市西区)には17日、次々と親子連れが訪れていました。長女(7)が季節性インフルエンザだった母親(46)は「今年は1カ月半に1回くらい発熱している」と話していました。

院長の古田博文さん(63)によると、最近はインフルや、「プール熱」として知られる咽頭結膜熱の患者が多く、コロナも毎日陽性者が出ています。今年はインフルの流行が早まったことで予防接種のタイミングと重なっており、市小児科医会会長でもある古田さんは「診察と予防接種で小児科はどこもいっぱい。受診しきれない例も出ている」と話します。

北海道感染症情報センターによると、コロナ前のインフルエンザは毎年11月~翌年2月ごろに流行していましたが、今年は10月下旬に全道の定点医療機関1カ所当たりの患者数が10人以上となる注意報レベルとなりました。11月13~19日は39.21人と8週連続で増加し、30人以上の警報レベルを超えました。

<図表>最近流行している感染症の患者発生動向

同期間の年齢別の定点当たりの患者数は、10~14歳が12.21人と最多で、8歳が3.27人、7歳が3.08人など幼児~10代が目立ちます。同期間の保育所、幼稚園、小中高校などの学級閉鎖は222、学年閉鎖は100、休校は16。年間通じていずれも0か1桁だった2022年、いずれも0だった21年と比べて、感染者の多さが際立っています。

一般的に夏季の流行が目立つ咽頭結膜熱の患者数も、この時季増えています。道内ではコロナ前は主に夏季が中心でしたが、今年は10月下旬に定点当たりの患者数が警報級の3人を超え、11月13~19日には6.88人となりました。過去10年で4人を超えたことはありません。

冬に流行することが多いRSウイルスも、今年は春から夏にかけてはやりました。コロナは患者数が減少傾向ではあるものの、冬に向けてまたピークが来る可能性があり、注意が必要です。道感染症対策課は「さまざまな感染症の拡大防止に向け、マスクをするなどのせきエチケット、こまめな手洗いを。咽頭結膜熱の感染予防にはタオルの使い回しを避けることも必要で、それぞれ対策に努めてほしい」と呼びかけています。

コロナ5類、人々接触し一気に 多様な抗体 獲得機会少なく

新型コロナウイルスの予防対策の徹底で、子どもの免疫力は下がったとも言われていますが、それは本当なのでしょうか。感染症の流行の変化の要因も含め、日本小児感染症学会理事で北大病院感染制御部部長の石黒信久さん(64)=臨床感染症学=に聞きました。

石黒信久さん

石黒信久さん

コロナの予防対策を徹底したことで、子どもの免疫力が全般的に落ちたというのは誤りです。ただ、ここ数年はコロナ対策の影響で、さまざまな感染症の流行が抑えられていました。それは同時に、さまざまな抗体を獲得する機会が少なかったことを意味します。

抗体は感染症ごとに異なります。ある感染症にかかると、それに対する抗体を獲得し、当分の間はかからずに済みます。ただ、別の感染症に対する抗体まで獲得していないので、他にかかる可能性があるのです。

インフルエンザなど多くの感染症は、いったん抗体ができても時間がたてば抗体の量が下がって再感染します。コロナの5類移行後、人との接触が増えたことに加え、前回の感染から時間がたったり、かかったことがない感染症に一気にかかっていると考えられます。流行の長期化や、最近、咽頭結膜熱が流行しているのも同じ理由と考えます。

お子さんに発熱があるとき、一番大切なのは十分な水分を取ることです。熱が下がらず、水分が取れずぐったりしている場合は、かかりつけ医にみてもらいましょう。

重症化の防止には、ワクチンの接種が効果的です。インフルやコロナは乳児や高齢者が重症化しやすいので、接種をお勧めします。最近、高齢者や妊娠中の方に対するRSウイルスワクチンも開発されました。すべての感染症にワクチンがあるわけではありませんので、感染を防ぐには、外から帰ったら手洗いとうがいをすることがとても重要です。

取材・文/尾張めぐみ(北海道新聞記者)

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