不登校で孤立の親子、どうすれば? 札幌でフォーラム

会場からの質問に答える登壇者。右からmitoさん、高村さとみさん、加藤弘通さん

会場からの質問に答える登壇者。右からmitoさん、高村さとみさん、加藤弘通さん

不登校の児童生徒が増え、道内公立中学校では昨年度、在籍者に占める割合が10年前に比べて3倍以上となりました。子どもと親が社会で孤立するケースが多く、悩みを共有し支援のあり方を考えるフォーラム「不登校、みんなどうしてる?」が、札幌市内で開かれました。

「ポレポレ」などが主催 経験者らと悩み共有

会場からの質問に答える登壇者。右からmitoさん、高村さとみさん、加藤弘通さん、司会でポレポレ共同代表の明田川知美さん

札幌で昨年から月1回親の集いを開いている「不登校を語る親カフェ ポレポレ」などが10月に主催、約150人が参加しました。ポレポレ共同代表のmito(ミト)さんと、同市東区のNPO法人フリースクール札幌自由が丘学園理事の高村さとみさん、北大大学院教育学研究院で発達心理学が専門の加藤弘通准教授が登壇しました。

道内公立校の不登校の児童生徒数

「学校へ行こうと頑張った末に力尽きる」

mitoさんは2人の子どもが不登校を経験しており、親カフェなどで見聞きした体験も交えて語りました。「子どもたちは何とか学校へ行こうと頑張った末に力尽き、めまいを訴えたり夏でも体に毛布を巻いていたり、学校に行けない自分を責めたりします。親も育て方が悪かったのかと自分を責める。親にとって子どもの苦しむ姿を見るのは本当につらい」と語りました。

親子を追い詰める状況はさらに続きます。《1》学校とのやりとり《2》不登校を受け入れられない家族との関係《3》少ない相談先の情報《4》経済的負担《5》世間の無理解《6》氾濫する情報―。

学校とのやりとりについては学校に出欠を連絡し、配布物を取りに行く日々に傷ついていくと言います。「学校の他に行く場所はないかスクールカウンセラーに聞くと、『教育支援センターはあるがこんな後ろ向きなのは知らない方がいい』と言われました」と振り返りました。

mitoさん

経済的負担は、親が仕事をできなくなり、困窮する場合があります。フリースクールの費用も全国平均で月3万円超となっています。

氾濫する情報は、インターネットに「不登校を治す」「〇カ月で復学」など、本当なのかわからない情報があふれています。「うっかり申し込みそうになるんです。そんな話をして支援者から『資格もないものに申し込むのは、ばかみたいじゃない』と言われましたが、カウンセラーや心療内科医など資格のある人に傷つけられてきたのです」と訴えました。

負担を軽減する工夫として、学校との連絡相談に使うフォーマットや道内のフリースクール一覧、不登校初期から回復まで子どもの状態の傾向を示した「段階表」などの活用を勧めました。

フリースクール 登校日数も時間割もさまざま

高村さんはフリースクールを紹介しました。不登校をはじめとする子どもの学習や居場所、相談支援を行う民間施設で、対象年齢や時間割、行事の有無も施設によりさまざまだと説明。保護者の将来への不安には「就職や留学、夢を追って東京へ行くと報告に来る卒業生がいる」と話しました。

高村さとみさん

子どもが訴える腹痛などについては「朝、学校に行くのがつらい気持ちが体に出ているのです。行かなくていいと安心して昼ごろ元気になるのは当たり前」。フリースクールが合わない子もいるとして、「明るい気持ちで過ごせれば自然に未来を考えられるようになります。家庭が最も安心できるならそれでいいと思います」と語りました。

「不利益被らない社会に」 対人関係の維持カギ

加藤さんは、不登校になってもダメージを受けない社会であるべきだと訴えました。文部科学省が2016年に「不登校は問題行動ではない」との見方を提示したにもかかわらず、いまだに不利益を被る現状があります。加藤さんが内閣府の依頼で「子供・若者の意識に関する調査」(20年)結果を分析したところ、25~29歳の不登校経験者の無職の割合は21.4%で、未経験者6.1%の3倍以上でした。

加藤弘通さん

どうすれば不利益を軽減できるのでしょうか。家族や友人、職場の人など対人関係が良好だと無職の割合が低い傾向があると言います。「不登校になっても対人関係を失わずに済むよう、個人の努力だけでなく制度設計が必要です」

支援者の不足も指摘しました。適応指導教室の職員は常勤・非常勤を合わせると15年から19年の間に3%減ったとし「不登校の小中学生は増えており、施策として足りていない」と述べました。

「ゲームばかり、大丈夫?」「中学卒業後の進路は?」

フォーラムでは会場との質疑応答も行われました。

Q ゲームやインターネットはどこまで自由にさせたら良いでしょうか。

mitoさん 最もつらい時期は、ゲームをしながら配信動画を見て音楽を聴く子どももいます。頭の中が不安でいっぱいなので、いろんな物を詰め込んでパンパンにするのです。しばらくすると落ち着いて、自分で調節することもあります。

加藤さん 禁止すると隠れて使用して、トラブルになった時に大人に相談できなくなります。SNSで知り合った人の話ができることが大事で、変だなと思った時は心配だと伝えた方がいいでしょう。

Q 中学卒業後はどのような選択肢がありますか。

高村さん 内申点がない場合にまず選択肢に挙がるのが通信制高校。登校日が週5日だったり、年に数日であとは家でリポートだったり学校によって異なります。私立全日制は受験方法の相談にのってくれるほか、公立全日制で内申点と当日点が1対9、2対8という試験もあります。

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

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