妊娠後期の面談強化 十勝管内自治体 全員対象、悩みに対応

十勝管内の自治体が妊娠後期の相談支援に取り組んでいる。今年2月から始まった政府の伴走型相談支援事業で動きが加速。従来は行政などが必要性が高いと判断した人への対応が中心だったが、全ての妊婦が対象になったことで、潜在的な問題への対応や自治体担当者との信頼関係強化が期待されている。

伴走型相談支援事業は、妊娠から出産、子育てまで一貫した支援が目的。各市町村が給付金交付と合わせて妊娠8カ月ごろの全妊婦向けに面談を行っている。

帯広市は事前に心配ごとなどを聞き取るアンケートを送付。希望者には市内6カ所ある地域子育て支援センターの保育士が相談に応じる。本年度は10月までに約500人に送付、約70人が希望した。これまでは妊娠初期に母子健康手帳を交付する時以外は全妊婦向けの面談はなかった。

音更町も妊娠後期の面談を始めた。以前は月に数件、相談が寄せられる程度だったが、現在は月15~20人と面談。内容は体調や上の子の世話、栄養や体重管理、就労、家計の問題など幅広いという。

2009年施行の改正児童福祉法で「出産前に支援を行うことが特に必要と認められる妊婦」を「特定妊婦」と定めた。具体的には若年、望まない妊娠、経済困窮などで、医療機関などからの情報をもとに各市町村の要保護児童対策地域協議会が登録し、保健師らが家庭訪問する。全国的に増えており、厚労省の調査では20年4月は8327人で、16年の2倍近くに増えた。

ただ、これらは氷山の一角とみられ、潜在的に不安や負担を抱え込む人もいる。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京)の妊産婦に関する報告書(18年3月)によると、全国の産婦1900人に複数回答で、妊娠中の悩みを聞いたところ「自分の体のトラブル」や「体の疲れ」が多かった。妊娠期間中に環境が変化することもあり、管内自治体の担当者は「結婚が破談になったり親との関係が悪化したりするケースもある」と指摘する。

こうした状況に対応しようと、政府の事業が始まる前から取り組む自治体もある。幕別町は15年度から7、8カ月の全妊婦を対象に保健師が自宅を訪問。町保健課は「妊婦から行政に相談するのはハードルが高い」とし、担当者が出向く重要性を強調する。

芽室町は7カ月ごろの全妊婦を対象に保健師が町保健福祉センターで面談し、年間約100件に対応している。町子育て支援課は「日常的に顔を合わせる機会を増やすことで、何かあったときに相談してもらえる関係をつくっていきたい」としている。(小坂真希)

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