連載【0カ月からの育児塾】

産後のセルフケア ストレッチで心身整えて

あおむけに寝て両ひざを立て、左右にゆっくり倒します。ストレッチ方法を紹介する高室典子さん(奥)。モデルは高橋桂子副院長

産後6~8週間は産褥(さんじょく)期といい、体が妊娠前の状態に戻ろうとする時期です。ワンオペ育児などで十分に休めないまま家事育児に追われる母親も多いでしょうが、子育ては気力体力勝負。体を酷使し続けては持ちません。支援サービスの利用などで休息を確保することに加えて、心身の状態を把握していたわりましょう。ストレッチなど産後のセルフケアについて、北海道助産師会会長で助産院エ・ク・ボ(札幌)院長の高室典子さんに聞きました。

出産後の母親の体は、伸びた筋肉や内臓の位置が元に戻ろうとしたり、女性ホルモンの分泌量が急減したりと大きく変化します。「半年、1年たってやっと自分らしく動けるかなというくらい」と高室さん。心身に不調をきたしやすく、子どもの世話で腰や肩を痛める時期でもあります。

高室さんが産後の女性に聞いたところ、体の不調はさまざまでした。《1》妊娠・出産で筋肉が緩むことなどによる尿漏れ《2》抱っこや授乳による腰痛、肩こり、頭痛《3》出産時の体内の水分量バランスの崩れや血行不良によるむくみ《4》出産と育児による全身の疲れ、だるさ、便秘《5》ホルモン量の変化による抜け毛、肌荒れ―。

ホルモンは心にも影響すると高室さんは言います。「なんとなく元気がない。育児を頑張ってもうまくできなくて自分を苦しめてしまう。変だなと思ったら友人に相談するなどして、心のケアを心がけましょう」

伸びた筋肉 ゆっくり元に戻そう

心身の調子を整えるために、高室さんが勧めるのはストレッチです。ポイントはゆっくり体を動かすこと。産後の状態は人それぞれなので、助産師や医師と相談しながら始めましょう。痛む、力が入らない時は無理をしないでください。

まずはあおむけの姿勢から。妊娠出産で伸びた腹筋の回復を助けるには、脚を伸ばしたまま床上から20センチほど上げて15秒静止し、左右交互に5、6回行います。無理せず少しずつ始めましょう。骨盤周りの筋肉や子宮の戻りを促すには、両ひざを立て、左右にゆっくり倒します。

続いて両ひざを立てたまま、肛門を締めるようにお尻を上げ下げします。胎児を支え出産時に緩んだ骨盤底筋群を元に戻す動きです。「速く動かすと逆に痛めてしまいます」と高室さん。

次に肩周りと背中です。両ひざと両手を床に付き、両手を1歩前に出して猫が伸びをするように胸を床に近づけます。「脇、肩甲骨、首の筋肉を伸ばして血液の循環を促します」。肩甲骨を大きく動かすには、体を起こして両手の指を肩に当て、大きく回します。

同じく肩回しで、今度は両腕を伸ばして手のひらを外側に向け、腕が耳のすぐそばを通るように回します。

次に首です。手を頭の上から回して反対側の耳の上に当て頭を倒します。

「首がちょっと伸びたなぁと思うところで止めます」。前に倒す時は両手を後頭部に当てます。

最後に授乳時の姿勢です。「背中を丸めると血液の循環が悪くなり、お腹周りに脂肪もつきます」。背骨の下にある仙骨を垂直に立てるよう意識しましょう。

正座でしびれて横座りする時は、お尻と床の間にクッションを入れます。骨盤を水平のままに保つことで、ゆがみを防ぎます。あぐらもお尻の下にクッションを入れると背筋が伸びます。

こうしたストレッチを生活に取り入れてほしいと高室さんは言います。「育児は毎日続きます。体を酷使し続けると、頭が痛い、気持ち悪い、吐き気がするといった症状が出てきます。自分のことも大事にしながら、楽しく子育てをしましょう」

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

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