車内に子ども残さないで 日陰も危険

写真はイメージ(チータン.C / PIXTA)

子どもを乗用車から降ろし忘れるなんて、あるわけがない―。本当にそうでしょうか? ある調査では、この1年で経験した人が、わずかながらいました。「ちょっとだけ」と、子どもを乗せたまま車を離れた人も。道内では近年、真夏日は珍しくなく、車の室温や子どもの体温は速く上がります。その「大丈夫」が思い込みではないか、見つめ直してみましょう。

「子どもを認識して車を離れた人」2割 オンライン調査

この1年以内に「子どもを認識せず車に残したまま離れた経験がある」人は0.4%。小学生以下を乗せている全国の運転者ら20~69歳計3377人が回答した調査の結果です。通園バスの置き去り検知システムを扱う三洋貿易(東京)が5月にオンラインで行いました。

子どもを認識した上で車を離れた人は20%。認識していなかった人との合計は20.4%で、前年調査の23.7%からほぼ横ばいです。このうち5.1%で、子どもにめまいや顔のほてり、頭痛など熱中症疑いの症状が生じました。

昨年11月には大阪で、2歳児(当時)が車に9時間取り残されて熱中症で亡くなりました。保護者が朝、保育所に預け忘れたことが原因で、近隣の最高気温は24.1度だったといいます。同様の死亡事故は昨年5月に新潟、20年6月に茨城でも起きています。

降ろし忘れ防止策 8割「特に行わず」

三洋貿易の調査では、降ろし忘れ防止策について「特に行ったことはない」と答えた人は78.9%に上りました。行った人は「クラクションの鳴らし方を教えた」12.7%、「子どもの近くにかばんなどの貴重品を置くようにした」6%、防止機能のある車や装置の導入もありました。調査を分析したNPO法人「Safe Kids Japan」(東京)の理事長で小児科医の山中龍宏さんは「自家用車にも安全装置の設置を義務付けるべきだ」と訴えます。

「エラーは誰しもある」と話すのは大阪大大学院の中井宏准教授(交通心理学)です。「生活の中の動作は無意識にできてしまう。一連の流れにいつもと違う動きが入ると、他の動作が一つ抜けることがあります」。子どもと物を同等には語れないと前置きした上で、車を止めて、「傘を持つ」という動作が入ったために鍵を抜き忘れる、といった例を挙げます。

また、習慣に強く影響を受けるため、無意識にいつもと同じ順番で動作を行うことがあります。普段は保育所A、B、職場の順に回るところを、B、A、職場に変えると、Bの次にいつも通り職場へ行ってしまいAを忘れることがあります。置き去り防止策や検知機なども保険にはなりますが「自分は大丈夫、機械は万能だと思わないこと。通りかかった人も気になったら車内をのぞいて」と話しています。

日陰でも熱中症の恐れ

真夏の車内はどれくらい暑くなるのでしょうか。日本自動車連盟(JAF)の実験によると、外気温32度の時に窓を閉め切って日なたに駐車した場合、車内の温度はエンジン停止から10分で27度から35度に上昇。20分で40度を超え、30分後には42度となりました。日陰でも10分後に31度、20分後34度、30分後35度と外気温を超えました。

また、冬の置き去りも危険です。外気温氷点下10~13度で行った実験では、エンジン停止から30分で車内温度は25度から10度以上低下し、2時間45分後には1.8度になりました。

子どもは体温調節機能が十分に発達しておらず、大人より注意が必要です。窓を開けておくことは防犯上のリスクがあり、エンジンをかけたままだと子どもが誤って操作する恐れがあります。

とはいえ、子連れの外出は大変です。2歳と生後11カ月の姉妹を育てる札幌市中央区の武川麻衣子さん(32)は「チャイルドシートに乗せた後、玄関の忘れ物を取りに行こうか迷うことはあるけれど、短時間でも置いて行くのは怖い」。2人を連れて出先を何軒も回るのは難しいので、同居の母に次女を預けて出掛けるといいます。

ワンオペ育児で頼れる人が身近にいないケースもあります。それでも車に子どもを残さずに済むよう、ちょっとした買い物は周囲の人や店が手を貸すなど、子どもを守れる環境づくりが必要です。

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

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