連載コラム「あそぶ→そだつ」第28回

【あそぶ→そだつ】石の研究 協同性育つ

前回このコラムで紹介した、札幌市内の認定こども園で2カ月ほど前から活動する「石研究所」。5歳児数人が中心の小さな研究所です。公園で見つけた奇麗な石から始まった遊びが続いています。

黒い画用紙の上で石と石をすり合わせ、紙に付いた石の粉を手のひらで触り「熱いね」と実験する子どもたち(実際は熱くないのですが)。戸外では、拾い集めた木や石を並べてたき火に挑戦。“火おこし”にはもちろん石を使います。家族とよくキャンプする男児が考えた遊びです。家庭での経験が園の遊びにつながり、実験は続きます。

同時に石の人形遊びが始まりました。担任保育者の「石にも気持ちがあるのかな」という何げない一言がきっかけです。大きめの石に顔を描き「石くん」と名前を付け、洋服を着せたり家を作ったりしてかわいがりはじめました。次第に石くんには「石ちゃん」「石赤ちゃん」など、家族が増えていきました。絵本を見るときも、滑り台を滑るときも一緒です。子どもの多様な思考力や想像力には驚くばかりです。

そんなある日のこと、担任保育者からお知らせが届きました。研究所のメンバーが光る石を発見したというのです。急いで園に出かけると、玄関に奇麗な光輝く石が展示されていました。研究所で話を聞くと、公園で遊んでいたら「土の中が光っていた」。掘り出そうとしたものの難しく、スコップを持ってきて改めて挑戦することに。翌日メンバーが協力して光る石を発掘したとのことでした。

石に関心を向ける子どもたちの目だからこそ、光る石を発見できたのでしょう。また、石の研究という共通の目的を持った子ども同士だからこそ、協力して掘り起こせたのでしょう。仲間と共に考え、工夫し、協力する協同性は、今後小学校以降の学び合いの姿につながります。他者と一緒に探求し続ける遊びの体験は貴重です。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

Area

北海道外

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