連載コラム「あそぶ→そだつ 」第27回

【あそぶ→そだつ】石見つめ広がる探究心

1カ月ほど前、札幌市内の認定こども園を訪れると、段ボールで作られた小さなスペースで5歳の男児3人が話し合いをしていました。入り口には「いしけんきゅうじょ」(石研究所)という看板があります。

担任保育者に話を伺うと、公園で見つけた石との出合いがきっかけとのこと。石の中が光っているから調べたいと、園に持ち帰り、園長先生のハンマーで石をたたいて割ろうと試みたり、石を柔らかくするために水に漬けてみたりと実験が始まりました。

数日後には別の石を拾ってきて、火をつけようと石と石をすり合わせて試している子がいたそうです。子どもの力で石は割れませんし、水で柔らかくはなりません。そして、火もつけられません。でも、こうしていろいろと試している実験が楽しいのです。また、こうして実体験から得る気づきや発見が貴重なのです。

保育者が机や石の図鑑、子どもたちが要望した白衣や軍手を準備し、この研究所が立ち上がりました。研究所に必要な電話やルーペは、子どもたちのお手製です。

子どもが主体的に自然などの環境に関わることで、知的興味や好奇心が高まります。自然の不思議さに出合ったとき、徹底的に試すことができる場所や時間を保障することが大切です。奇麗な石を拾って持ち帰ることも子どもにとっては喜びですが、この男児たちのように、さまざまな探究ができる遊び環境が用意されることで、石への関心はさらに広がるでしょう。

研究所をじっくり眺めている私に、「宝石が入っている石があるんだよ」と教えてくれた男児がいました。きっと、これが最初に出合った光る石なのでしょうね。石の探究はまだまだ続くようです。石研究所のその後について、次回またお知らせしたいと思います。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

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北海道外

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