シラカバ花粉、子どもも注意 リンゴなど果物アレルギー発症

写真はイメージ(ryanking999 / PIXTA)

シラカバの枝先にぶら下がった房から花粉が舞う季節です。道内に多いシラカバ花粉症は子どもでも発症することがあります。さらに、リンゴなどバラ科の果物を食べると口や喉が腫れる「シラカバ花粉―食物アレルギー症候群」になると、花粉の時期が終わっても油断できません。多くの場合は口の症状にとどまりますが、豆乳を飲んでアナフィラキシー(重いアレルギー症状)を起こす例もあります。KKR札幌医療センター(札幌市豊平区)の小児・アレルギーリウマチセンター特任部長高橋豊さんに、注意点などを聞きました。

花粉を飛ばすシラカバの雄花=2013年、札幌市内

花粉を飛ばすシラカバの雄花=2013年、札幌市内

シラカバは4月下旬から6月が花粉症シーズンで、主な症状はくしゃみ、鼻水、目や喉のかゆみ。花粉を異物とみなして排除する抗体が体内で作られ、個人差はありますが、抗体が増えると発症し症状も強くなります。KKR札幌医療センターの高橋豊さんは、食物アレルギーで通院する子どもの検査結果として「6歳ごろから花粉症に気付く子が増えてくる」と指摘します。シラカバ花粉の抗体がある子の割合は1歳では数%ですが、2歳で3割になり、7~9歳で8割前後になります。

高橋豊さん

高橋豊さん

治療は、症状を抑える抗ヒスタミンの飲み薬や副腎皮質ステロイド点鼻薬、目薬の使用が一般的です。スギ花粉症で行われているアレルギー症状の根治を目指す「舌下免疫療法」のシラカバ花粉症向け薬剤について高橋さんは、「欧州では商品化されているが、日本は道外の患者が少ないため可能性は低いのでは」と話します。

バラ科の果物で口かゆく 豆乳でアナフィラキシーも

シラカバ花粉―食物アレルギー症候群を引き起こす食べ物は、リンゴやナシなどのバラ科果物と、キウイ、バナナ、メロン、ナッツ、セロリなど。食べると口の中がかゆくイガイガし、腹痛になることも。これらの食品とシラカバ花粉のタンパク質の構造が似ていて、体が間違えて反応するために起こります。花粉症の症状の自覚がなくても、アレルギーの症状はあるという子もいます。

札幌市の小中学生の食物アレルギーの中で、果物はトップです。市教委の2023年度調査によると小学校が5517人で、2番目に多い卵の1.4倍、中学校は4131人で同3倍に上りました。13年度に比べるとそれぞれ81%増、45%増でした。高橋さんによると道外ではこれほど多くないため、シラカバ花粉症との関係が推測されます。増加理由は分かっていませんが、食物アレルギーの子全体の数が増えたほか、全国的に子どもの花粉症が増えたという調査結果があります。

シラカバ花粉―食物アレルギー症候群の症状は、口の中にとどまることが多いです。原因となるタンパク質が消化酵素に弱いためです。しかし喉が締め付けられて呼吸困難になったり、アナフィラキシーを起こしたりすることもあります。加熱すると症状が出ない食品も多いですが、症状の出方は個人差が大きく、急に症状が強くなる人もいます。高橋さんは「急激な大量摂取を避けて」と指導しています。

近年、注意喚起されているのは、豆乳を飲んでアナフィラキシーとなるケースです。大豆もタンパク質の構造が似ており、シラカバ花粉―食物アレルギーを引き起こす食物の一つ。高橋さんは、加工時の加熱が弱かったり、固形より液体の方が急激な大量摂取につながったりする可能性を指摘。「豆乳は原則避けるよう指導している。他の大豆製品も含め、十分加熱してあれば大丈夫であることが多い」と話します。加熱により、タンパク質が変化するためです。非加熱の大豆成分の入ったプロテインを飲んで救急搬送された例もあるといいます。

また、少しずつ食べて治療する卵や小麦などのアレルギーと違い、このアレルギーはリンゴなどを食べ続けても改善しないと、現在では考えられています。

飛散量は増える見込み 道立衛生研究所

シラカバ花粉の飛散はピークを越えつつありますが、まだまだマスクは外せません。道立衛生研究所(札幌)は2024年の飛散量について、昨夏の暑さが影響し例年(過去10年)より増えると予想しています。道内7カ所の観測地のうち函館が60%以上の増加、札幌、旭川、帯広、北見が20~60%増、岩見沢と稚内が例年並みです。

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

2024
5/21
TUE

Area

北海道外

その他