6歳で視力1.0、育み維持を 6月10日は「こどもの目の日」

「こどもの目の日」をPRするポスター(日本眼科学会・日本眼科医会提供)

「こどもの目の日」をPRするポスター(日本眼科学会・日本眼科医会提供)

日本眼科医会と日本眼科学会などが今年から6月10日を「こどもの目の日」と定めた。「はぐくもう! 6歳で視力1.0」を掲げ、子どもの目の健康を守る取り組みと啓発活動を進めていく。記念日制定の狙いや子どもの目の現状は―。

年代ごとに課題と対処法

「6歳までに弱視を治療し視力1.0を獲得する。6歳からも目を大切にし視力1.0を維持する」。日本眼科医会の白根雅子会長=しらね眼科院長、広島県府中町=は、記念日制定に込めた願いをこう話す。

白根雅子さ​ん

白根雅子さ​ん

なぜか。生まれたばかりの赤ちゃんは目の前の動きが分かる程度しか見えない。目は乳幼児期にいろいろなものを見ることで成長・発達し、6歳くらいで視力1.0に達する=図=。この間に、ものをはっきりと見ることができない状況があると、視力の発達が遅れ、メガネをかけてもよく見えない「弱視」となる。

子どもの視力の発達の目安

一方、視力1.0を獲得した子どもには近年、近視が増えている。裸眼視力が1.0未満は小学1年生で4人に1人、小学6年生で約半数、中学生では約60%。年齢が上がるにつれて、その割合が増えている。

乳幼児は「弱視の発見と治療」、学童は「近視の進行抑制」、中高生は「コンタクトレンズによる目の障害の予防」―。白根さんは「眼科は切れ目なく子どもの目を守る課題に取り組んでいる。子どもや保護者、学校と協働し啓発活動を推進していきたい」と話す。

弱視は治せる 早期発見を

弱視の原因として、日本弱視斜視学会の佐藤美保理事長=浜松医科大医学部眼科・病院教授=は、《1》遠視や乱視など目の屈折異常《2》左右の目の見え方に差がある(不同視)《3》片目の視線がずれている斜視―などを挙げる。屈折異常があるとはっきり見えず視力の発達が妨げられ、見え方に差があると見えにくい方の目の視力の発達が妨げられる。

佐​藤​美​保​さ​ん

佐​藤​美​保​さ​ん

「本来よく見えるはずの目。弱視は適切な環境にすることで治せる」と佐藤さん。屈折異常はメガネで矯正し、左右差は片目をパッチで隠して訓練するなどの治療法がある。「治療は早く始めると結果がよい。早期発見が大事だ」。そのためには市町村が行う乳幼児健康診査、特に3歳児健診が重要になると説く。

3歳児健診は、事前に保護者が家庭で視力を検査する。さらに近年は当日会場で、弱視の原因となる目の異常の疑いがあるかどうかを見分ける「屈折検査」を行う自治体が増えている。これらの検査の結果、精密検査が必要と判断されたら眼科を受診する。

屈折検査は、専用の検査機器を子どもの目に向けて、短時間で調べることができる。日本眼科医会の全国調査では、2022年度の実施市町村(実施予定も含む)は70.8%に上る。100%の県もあるが、北海道は45.3%と少ない。同会は屈折検査の全市町村への導入を呼びかけている。

こどもの目の日の制定について、佐藤さんは「保護者に弱視やその早期発見の大切さ、3歳児健診の重要性を知ってもらうよい機会になる」と期待を寄せた。

一方、近視は、眼球の前後の長さ(眼軸)が伸び、遠くのものがよく見えない。眼軸は、背が伸びる成長期に伸びやすく、一度伸びたら戻らない。近視は遺伝的な要因と環境的な要因とが複雑に絡み合って生じる。

近視がなぜ問題か。近視は、進行して程度が強くなると、将来、緑内障、網膜剥離、黄斑変性など重篤な目の病気になるリスクが高くなるという。近視の進行を防ぐ有効な対策として、佐藤さんは次の2点を挙げた。「1日2時間の屋外活動」と「長時間の細かい作業を避けること」だ。

正しい知識で近視を抑制

今、学校では児童や生徒が1人1台のデジタル端末を使う時代になった。子どもたちの目へのさらなる負担が懸念される。日本眼科医会は、子どもの目の健康を守るため、マンガ、動画、電子書籍などの啓発コンテンツをホームページで発信=表=。無料で見ることができる。

写真右/丸​山​耕​一​さ​ん

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担当する丸山耕一理事=川添丸山眼科院長、大阪府高槻市=は「目の健康を守ることを習慣づけ、学校や家庭で近視の進行を抑えたい。子どもたちの目の健康に対するリテラシー(正しい情報を入手、理解し活用する力)を育み、自律性を高めたい」と述べ、積極的な活用を呼びかけた。

取材・文/岩本進(北海道新聞くらし報道部編集委員)

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