冬の便秘 生活スタイルを見直してスッキリ

厳冬期は便秘に悩む人が増えます。夏に比べて水分摂取量が減るほか、運動不足や体の冷えが影響し、快便が遠ざかります。便秘と関連性がある痔(じ)の人は雪かきなど屋外での力作業も関係するようです。生活スタイルを見直しスッキリした日々を送りたいですね。

水分多めに摂取/体の冷えも大敵/薬への依存に注意

札幌市の女性(48)は最近、トイレにこもる時間が長くなりました。年末年始は特にひどく、4日以上便通がないこともありました。こんな経験は初めて。「正月料理をいろいろ食べたのに全く便意がなく、おなかも張ったので焦りました」

便秘に詳しい札幌いしやま病院(中央区)の河野由紀子医師によると、便には食べ物のかすや腸内細菌、はがれた腸粘膜のほか水分が含まれており、便通に水分は欠かせません。理想的な水分量は便の70~80%とされますが、水分が少ない便は大腸を進むスピードが遅くなる上、腸は水分を吸収するので便がたまるほど水分を失い便秘になります。

河野由紀子医師

河野由紀子医師

冬場でも1日1.5~2リットルの水分を取ることが便秘解消の第一歩。河野医師は「食事中や食後に水やお茶を飲むなど、意識して水分摂取してください」と呼びかけます。

運動不足も便秘に関係します。便は直腸から肛門へと押し出されますが、腹筋や骨盤底筋が弱いと排便に苦しみます。体を動かさなければ腸の動きも促進されません。「室内で座りっぱなしになるのではなく散歩したり、掃除するだけでもいい。軽い腹筋運動も効果的です」

冷えも大敵です。腸の動きは自律神経によって調整されており、主に副交感神経が働くと活発化しますが、体が冷えると自律神経のバランスが崩れやすくなります。冬場は風呂にゆっくりつかり、職場や自宅でも膝掛けを使うなどして体を温めます。

一方、痔の人は寒さで血流が悪くなって状態も悪化するため、排便を避けて便秘になることも。いぼ痔は雪かきで腹に力を入れるタイミングで悪化することもあるのでやっかいです。

日本消化器病学会関連研究会の慢性便秘症診療ガイドラインによると、便秘は週3回未満しか排便がない状態や、排便があっても残便感がある状態を指します。市販の便秘薬で解決することもできますが、依存しないように気をつけることを勧めています。特に刺激の強い便秘薬は長期の使用で大腸の粘膜に色が沈着する「大腸黒皮症」を招きかねず、自力で排便する力を失う懸念もあります。整腸剤から試してみるのが無難です。

河野医師は「毎日ではなくても、すっきり排便できればいいのです。気になる場合は、便秘外来やドラッグストアの薬剤師に相談してみてください」と話しています。

マッサージでねじれ腸改善

便秘は冷えだけでなく、腸のねじれが原因になることもあります。便秘外来を開設している加藤胃腸科・内科クリニック(苫小牧)は、「ねじれ腸」による便秘を改善するためのマッサージの方法=イラスト=を患者に伝えています。

クリニックの加藤茂治院長は5年前、便秘に悩んでいた看護師2人と共に、「便秘の名医」で知られる国立病院機構・久里浜医療センター(神奈川県)の水上健内視鏡部長を訪問しました。

加藤茂治院長

加藤茂治院長

看護師の腸をコンピューター断層撮影装置(CT)で検査したところ、2人とも重度のねじれ腸でした。水上医師からマッサージの方法などの対策を教わり患者に伝えているほか、看護師のCT画像もホームページ(HP)内の「便秘外来」で公開しています。

内視鏡を得意とする加藤院長もねじれ腸の患者を診察する機会が多いようです。加藤院長は食生活の改善も勧めており「漬物やみそ、納豆などの発酵食品のほか、食物繊維を多く含む海藻やイモ類、ゴボウなどを適度に摂取してください」と話しています。

取材・文/上田貴子(北海道新聞記者)

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