連載コラム「瀬川院⻑のすくすくカルテ」最終回

空気を飲み込み腹痛、どう改善? 食べ方や癖を見直して

Q.質問

小6の長男が夕食後に強い腹痛を訴えたため、夜間救急を受診しました。エックス線検査の結果、胃と腸がガスで膨れていることがわかりました。空気を大量に飲み込んだため、腹痛になったのではと言われました。時々、おなかを痛がることがある子なのですが、どういう病気が考えられるでしょうか。

A.回答

回答お子さんの病名は、空気嚥下症(えんげしょう)と思われます。呑気症(どんきしょう)とも言います。誰でも、食べたり飲んだりするとき、一緒に空気を飲んでいます。胃腸のガスの7割は飲みこんだ空気なのですが、その量が多すぎると、さまざまな症状が現れます。18歳以下を対象とした調査によると、空気嚥下症の発生率は3.7%とされ、小児でも特別に珍しい病気ではありません。

主な症状は、おなかが張る「腹部膨満」、腹痛を繰り返す、もしくは急な腹痛がある、げっぷを繰り返すことやおならの増加などです。乳児期には、嘔吐(おうと)や、体重の増加が平均以下である「体重増加不良」のことがあります。腹部膨満は、日中に悪化し、就眠中に改善して朝にはなくなるという場合もあります。腹部膨満があるのは、空気嚥下症と診断された人の半分弱とされます。

診断は、特徴的な症状と腹部のエックス線検査により行います。

乳児では激しく泣いたり、授乳の際に空気を飲んだりして起こることが多いので、治療は、空気をたくさん飲まないよう指導するほか、体の右側を下にして寝そべる「右側臥(そくが)位」の姿勢をとって胃の上方に空気を集め、ゲップで空気を外に出しやすくすることで改善します。

幼児以上では、早食いや大食い、炭酸飲料の飲みすぎなども誘因になり、そうした食べ方を直すことが有効なこともあります。また、年長児以上では心理的要因が発症に関わることが多いようです。不安や緊張のある環境が誘因となるため、胃腸のガスを減らす薬を使いながらメンタル面での支援を行います。

子どもの空気嚥下症の1割弱は、無意識に歯をかみしめる癖が原因で空気を多く飲みこみ起きるという報告があります。これは口内にかみしめた跡があることでわかりますので、歯科に診察をお願いする場合があります。腹痛を繰り返す場合は、一度かかりつけ医に相談されるとよいでしょう。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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