子どもの「お口ぽかん」に注意! 生活習慣を見直して口腔機能の発達を促そう

写真はイメージ(KY / PIXTA)

テレビを見たり、絵本を読んだりする時、子どもの口が開いたままになっていませんか。この状態は「お口ぽかん」と言い、口の機能が十分に発達していない「口腔(こうくう)機能発達不全症」の症状の一つです。新型コロナウイルス禍でマスクを着ける時間が増え、大人の口元を見て食べ方や話し方をまねる子どもの学習機会も減っています。同症の広まりにつながりかねない状況に、専門家は「普段の暮らしの見直しが改善につながる」と生活面のチェックを促しています。

口腔機能発達不全症とは?

口腔機能発達不全症は、先天性の病気のない子どもで「食べる・話す・呼吸する」などの機能が十分に発達していない、正しい使い方ができていない状態をいいます。2018年に日本歯科医学会が病名を付け、同年から治療が保険診療の対象になりました。斉藤一誠(いっせい)朝日大学教授が新潟大学准教授だった21年に行った調査によると、全国の3~12歳の3割が「お口ぽかん」に該当したといいます。

子どもの口腔機能発達不全症チェックリスト

同症が疑われるポイントは、《1》食べ物をよくかんでいない《2》飲み込むときに舌が出る《3》常に口が開いている《4》言葉が聞き取りにくいなどです。自覚症状がない場合も多いですが、病状としては、食べ物をうまく飲み込めなかったり、口呼吸などがみられたりします。治療は、それぞれの子どもに合った計画を立てて、口唇トレーニングや食べ方・話し方の指導などを定期的に行います。

姿勢や呼吸、生活の見直しを

岩寺信喜院長

岩寺信喜院長

全国小児歯科開業医会理事で、同症に詳しい南郷通り子ども歯科(札幌市白石区)の岩寺信喜院長(40)は「食生活や姿勢など生活習慣の見直しで、舌と唇を上手に使えるようになる可能性があります」といいます。猫背やテレビを見ながら横向きでご飯を食べるなど姿勢が悪いと、しっかりかむことが難しくなります。

トレーニングと気をつけること

改善するポイントは《1》正しい姿勢をする《2》口呼吸でなく鼻で呼吸する《3》口周りの筋力を付ける《4》よくかむなどです。《4》については、具材を大きめにして、食事を水や汁物で流し込まないようにするなど、少し気を付けることで、しっかりかめるようになるといいます。おにぎりや焼きイモなど、手で持って口を大きく開いて食べるのも表情筋を鍛えることにつながります。

岩寺さんは「にらめっこや風船を膨らませるなど、生活の中で、口の周りを使う遊びを取り入れても良い」と話しています。

口の筋力、体操で鍛えよう 子ども向け動画公開

お遊戯を楽しむ感覚で口周りの筋力を鍛える体操もあります。全国小児歯科開業医会は2021年、家庭や保育現場などで口周りを動かす機会を増やしてもらおうと、「はっけよいアニマル体操」を考案しました。同会のホームページ上で動画を公開しています。

「はっけよいアニマル体操」動画

「はっけよいアニマル体操」動画

動画は、子どもたちがサファリ探検を楽しむという構成で、体操をしながら鼻呼吸をしたり、口の中で舌を回したりする運動などを紹介しています。「コロナ禍で大声で笑うなどの機会が減り、子どもの口周りの成長の遅れが心配される」と同会理事の岩寺信喜さん。大人も口周りの筋力が衰えがちになるため、「子どもも大人も楽しみながら体操に取り組んで」と呼びかけています。

動画は同会のホームページ(http://www.jspp.net/34_movie.html)から視聴できます。

取材・文/田口谷優子(北海道新聞記者)

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