連載コラム「瀬川院長のすくすくカルテ」第45回

コロナ感染後の搾乳 器具や容器の消毒を徹底

Q.質問

出産の2日前に新型コロナウイルスに感染しましたが、病院で無事に出産できました。しかし、赤ちゃんが2200グラムと小さかったことなどから、新生児集中治療室(NICU)に入院しました。搾った母乳を赤ちゃんに与えたいのですが、大丈夫でしょうか。

A.回答

コロナに感染している場合でも、赤ちゃんに搾乳した母乳を与えることは可能です。母乳中に感染力のあるコロナウイルスが確認されてないことが、これまで多くの研究で報告されているからです。2022年の報告では、コロナに感染した母親の母乳の6%にウイルスの遺伝物質であるメッセンジャーRNA(mRNA)が検出されましたが、実際に感染性のあるウイルスはまったく検出されなかったとされています。

母乳による感染がないとしても、コロナに感染した母親が、搾乳の際に触れた器具や容器などを介して感染する危険性が、まったくないわけではありません。したがって、搾乳に際しては次のように細心の注意を払う必要があります。

《1》搾乳前にマスクがきちんとフィットしているか確認する《2》手にせっけんを付けてから流水で20秒以上しっかり洗う《3》乳輪周りを清浄綿で拭く《4》手で搾乳する場合、マスクや自分の顔、周囲のものに触れないようにし、触れたら必ず手洗いをする《5》搾乳器を使う場合は、毎回、機器を洗浄・消毒する《6》母乳を保存する場合、専用の母乳保存パックに入れて、パックの表面をアルコール綿で拭いた後、ビニール袋に入れる。

コロナに感染した母親の産後2日目の母乳中には、すでにコロナに対する抗体が分泌されており、母乳は赤ちゃんのコロナ感染を予防しているとされています。実際に搾乳した母乳を与えられるかどうかは、施設の状況などによって異なりますので、まずは入院している施設に相談されることをお勧めします。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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