連載【0カ月からの育児塾】

【座談会編】コロナで産前・産後に制約 子育ての不安と負担も増大

育児の悩みについて語り合う(左から)谷川さん、青木さん、司会の高室さん、熊島さん、中村さん=9月26日、札幌市西区の助産院エクボ(石川崇子撮影)

育児の悩みについて語り合う(左から)谷川さん、青木さん、司会の高室さん、熊島さん、中村さん=9月26日、札幌市西区の助産院エクボ(石川崇子撮影)

赤ちゃんとの関わりを記事や図解、動画で解説する「0カ月からの育児塾」。今回は、子育て中の母親4人に集まってもらい、子育てで抱える悩みをテーマに座談会を開きました。新型コロナウイルスの感染拡大で、面会制限など制約の多い産前、産後を経験し、思いは、より切実です。司会は北海道助産師会会長で、「育児塾」を担当する高室典子さん(札幌)です。

座談会の参加者(子どもの年齢は9月下旬の取材当時)

■谷川愛子さん(42)
札幌市西区/会社員/長女高3、次女中1、三女小1、長男1歳
■青木さくらさん(32)=仮名=
札幌市西区/主婦/長女5カ月
■熊島いずみさん(33)
札幌市西区/美容師/長女5歳、次女1カ月
■中村真弥さん(34)
札幌市東区/大学教員/長男4歳、次男1歳、妊娠10カ月

頼れる情報、家族の支援切実

高室 青木さんは今年の春、コロナ下の出産を経験しましたね。面会制限などはありましたか。

青木 私の入院先は、陰性証明を提出すれば立ち会い可能でした。でも夫の仕事の都合もあり、分娩(ぶんべん)室で電話を通じて会話できる「リモート出産」を選びました。分娩室に入って47時間かかりましたが、夫が電話で励ましてくれました。

高室 対面で両親教室を休止した病院や行政機関もあります。赤ちゃんと暮らすポイントやお世話の仕方などを習っていないという人もいるのでは?

青木 病院がオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」で両親教室を開いてくれました。

谷川 高校3年から1歳まで4人を育てています。当然ながら、両親教室で教わった通りにいかないことも少なくないです。母親は、産んだらすぐに「良い母親」になれるわけではなく、少しずつ成長するので、「頑張っているね」と応援してほしい。

高室 頼れる人とつながることが難しかったと思います。コロナ前も現在も、ほしいのは正確で信頼できる情報ですね。産前、産後は何が不安でしたか。

谷川 (第1子の時は)知識が少ないまま子育てが始まったので、想像を絶する大変さでした。一番こたえたのは睡眠不足。赤ちゃんが泣いているのに、なぜ泣くのかわからない。「母乳が足りないから?」と自分を責めてしまいました。

中村 私は助産師資格を持っていますが、自ら子育てをして、(知識以上のことを)身をもって知りました。生まれて間もない赤ちゃんと向き合い、どう遊ばせるか、何を着せるか、戸惑うことばかりでした。

コロナ下も変わらぬ育児の悩み

高室 育児は結果がすぐに見えず、頑張っても周囲は思ったほど褒めてくれない。子どもを産んだだけで○(まる)、命を1日つなげただけで○です。

熊島 私は2人目を産んだばかりです。常に赤ちゃん優先で、食事やトイレなど私のしたいタイミングでできません。上の子のお世話や家事が加われば、なおさら。夫が大変さを理解してくれて「ありがとう」の一言があればうれしい。

高室 同感です。「一日、大変だったね。お疲れさま」の一言がほしいですね。皆さんの中で、育休を取った人はいますか?

谷川 私は4人目の時、育休を8カ月取って仕事に復帰しました。コロナ下で夫が在宅勤務をして、産後1カ月くらい、サポートをしてくれました。夫は仕事が多忙で育休を取りにくい立場だったから家にいてくれ助かりました。

熊島 夫は私と同じく美容師。売り上げがなければ収入がなく、育児のために休むことはしませんでした。産後は、夫が早めに仕事を終え、上の子を保育園へ迎えに行ったり、夕ご飯を作ってくれたりしました。

高室 コロナ前を含めて、困った時に助かったサポートはありますか。

中村 保育園です。一緒に子どもの成長を見守ってくれた。(助けてくれる)保育園がなかったら2人目以降を産む選択をしなかったと思います。

谷川 赤ちゃんの離乳食や食育、発達や関わり方など、保育園の先生に相談して悩みが解消しました。保育園が母親を育ててくれる面もあると思います。

社会全体で育児のサポートを

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今回の座談会は、核家族化や少子高齢化が進む中、「育児の負担がママに大きくかかっている現状を知ってほしい」という高室さんの願いから行いました。

終了後、参加者の配偶者が思いを寄せてくれました。熊島さんの夫一樹さん(36)は「妻の負担が減り、仕事や育児を、より楽しくできるようサポートしたい」。中村さんの夫圭佑さん(33)は「どちらかに負担が偏ることなく、親として協力して育児ができたら」といいます。

高室さんは「出産直後から、ママは寝不足の中、赤ちゃんの命を必死に守っています。パートナーを含め、社会全体で、産後の女性を理解し、子育てをサポートしたり、見守ったりしてほしい」と話しています。

取材・⽂/田口谷優子(北海道新聞記者)

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