不育症 血液製剤が有効 妊娠初期に大量投与で出産率上昇 札幌の医師ら研究

流産などを繰り返す不育症について、抗体を多く含む血液製剤「免疫グロブリン」を妊娠初期に大量投与すると妊娠の継続や出産に至る割合を上昇させることができたとの研究結果を、山田秀人・手稲渓仁会病院(札幌)不育症センター長らの研究グループがまとめた。流産や死産を防ぐ有効な治療法として期待される。

不育症は流産や死産を2回以上繰り返す病態。日本産婦人科感染症学会の理事長も務める山田センター長によると、国内で妊婦の20人に1人いるとみられる。半数以上は原因不明で、有効な治療法がなかった。

研究は2014~20年、道内外の14施設で共同実施。子供がおらず原因不明の流産を4回以上経験した42歳未満の妊婦99人を対象とし、妊娠4~6週に連続5日間、血液製剤を1日20グラム(体重50キロの場合)点滴した50人と、生理食塩水を同量点滴した49人を比べた。

​山​田​秀​人​氏​

​山​田​秀​人​氏​

血液製剤を投与した50人は、妊娠22週時点の妊娠継続率が62.0%と、食塩水を投与した49人より27.3ポイント高く、出産率も58.0%と23.3ポイント高かった。特に、妊娠4~5週に投与を始めると妊娠継続率は67.6%、出産率は61.8%となった。ただし早産や小さく生まれた割合が高かった。

免疫グロブリンは川崎病やギランバレー症候群などの治療に使われている。不育症患者に血液製剤を投与する研究は2000年前後に各国で行われたが、投与量が少なく有効性が認められなかった。

原因不明の不育症は、母体の免疫細胞が胎児を異物ととらえてしまう免疫異常が一因とみられる。研究グループは、妊娠初期の投与量を増やすことで異常が修正され、効果が出たとみている。

結果は英医学誌の電子版に6月29日公表。手稲渓仁会病院は自由診療で治療を行っているが、山田センター長は「広く治療を受けられるよう、保険適用になるよう行動したい」と話した。

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