動物の世話で伸び伸び成長 大沼「こども園スーホ」 カリキュラムほぼなし

小屋から出したニワトリに餌を与えるスーホの園児たち

【大沼公園】牧場の敷地内に設けられ馬やヤギ、ウサギやニワトリの世話をしながら自然の中で子どもが過ごすユニークな保育園が七飯町内にある。大沼流山牧場(東大沼)の企業主導型保育施設「牧場のこども園スーホ」(定員9人)。1日の決まったスケジュールは動物の世話だけで、子どもたちは「できるだけ自由」にしているという保育園を訪ねた。

「ニワトリを出すよ」。7月19日午前8時45分、園長の高橋諭子(さとこ)さん(54)が声を掛けると、3~5歳の園児が小屋に入っていたニワトリ5羽を抱きかかえ、外に放した。「あ、卵産んでるね」。小屋の片隅にあるまだ温かい卵を取りだし、餌を与える。

次はヤギ5頭とポニー1頭、ウサギ5匹を外に出し、それぞれの小屋の中のふんを掃除。ポニーのブラッシングと蹄(ひづめ)の汚れ取り、飲み水の補充を終えると、午前10時の小昼(こびる)(方言でおやつの意)になる。この日のメニューは冬に取った樹液で作ったメープルジュースと、畑で取れたキュウリとトマト。一仕事終えた園児たちはキュウリをバリバリとかじり、思い思いの遊びに繰り出していった。

ポニーのブラッシングや蹄の手入れも園児たちの大切な仕事

ポニーのブラッシングや蹄の手入れも園児たちの大切な仕事

スーホは2016年に開設。同牧場職員の0~5歳の子どもと、空きがあれば地域の子どもを受け入れている。現在は七飯町と北斗市から通う6人が在園。元教員で保育士の高橋さんは開設時からのスタッフで「この環境だからこそできる保育がしたい。人間が生態系の一部であることを感じてほしい」と話す。

群馬県出身の高橋さんは本州の小中学校や保育園で働き、2009年に知人に誘われ道南に。知人が参加する七飯町内のNPO法人の職員として、道内外の子どもを大沼に招いて自然体験してもらう事業に携わった。しかし、都会から来た子どもの中には「何もない」「何をすればいいの」と戸惑う子もいた。川も木も草も土もあり、動物も昆虫もいるのに、何もしない子どもたちに、衝撃を受けたという。

「現代の子はやるべきことを与えられ過ぎていて、自分がやりたいことを考えて実行する機会が少ないと感じた」(高橋さん)という経験から、スーホにはカリキュラムはほとんどない。子どもたちは気ままに虫を捕ったり、ボールを投げたり、木登りをしたりして過ごす。

朝からせっせとヤギのふんを集め、ニワトリを追いかけていた平島光莉(みり)ちゃん(4)は「保育園で好きなのは遊ぶこと」とにっこり。動物の世話は子どもにとっては仕事でもあり、自分がやりたい遊びでもあるようだ。母の美紀江さん(50)は「去年はニワトリを絞めて食べた。娘は楽しくて通っているだけだが、命や自然について伸び伸びと学べる環境は貴重」と話す。

高橋さんは「市街地から遠いことがネック」と苦笑いする。同園は現在、園児を募集中。見学などの問い合わせは同園、電話090・9759・4194へ。

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