新型コロナ、お産にも影響 里帰り、立ち会い、面会…相次ぐ制限

写真はイメージ(metamorworks / PIXTA)

新型コロナウイルス感染拡大は出産にも影響を与えています。多くの産院では出産時の夫やパートナーの立ち会い、入院の面会が制限され、外出自粛の中、産後の不安も増しています。妊婦や夫ら周囲の人はどんな心構えで産前産後の備えを進めればいいのか、専門家に聞きました。


日本産科婦人科学会などは4月、妊婦と医療スタッフの感染リスクを避けるため入院時の面会を制限し、里帰り出産や立ち会い出産を「推奨しない」とする通知を医療機関に出しました。自治体や産院による(育児を学ぶ)「両親学級」も休止しています。

札幌マタニティ・ウイメンズホスピタル(北区)も面会や立ち会い出産を中止しています。産前・産後教室も休止中で、代わりに助産師が個別に行う保健指導で出産前後の生活を説明しているほか「安産体操」を動画で配信しています。

ベネッセコーポレーションが4月に行った妊婦約3千人への調査では、新型コロナ感染拡大の出産への影響(複数回答)として「両親学級の中止による情報不足」(61%)、「入院中の面会中止」(55.1%)、「出産時の立ち会い中止」(51.8%)を挙げる人が多かったです。

2月に札幌に戻り、4月中旬に里帰り出産した東京都の会社員、川村優里さん(30)は夫が立ち会いを希望していましたが、緊急事態宣言で夫は札幌に来ることができず、産院でも立ち会いは禁止になりました。

夫は今も子どもに会うことができていません。「出産後、夫はしばらく札幌に滞在し夫婦で子育てをする予定だった。産後の一番大変な時期を共有できなかったので、この先(育児や家事で)夫の協力を仰げるか、少し不安がある」と言います。

心配ごと、医療関係者に伝えて
不安解消、夫が耳傾ける姿勢を

新型コロナ感染拡大の影響が続く中、安心してお産を迎えるにはどうするとよいでしょうか。

母乳育児相談室ピア(札幌)を主宰する助産師の佐藤千鶴さんは「医療関係者を最大限に頼る」ことを勧めます。「出産前後は通常でも不安なのに、今はコロナでさらに不安が増している。心配なことや、説明を聞いてわからなかったことは1人でもやもやと抱えず、とにかく口に出して伝えて」と話します。電話やメールで相談に応じる助産師のサービスもあります。

育児グッズは焦ってそろえなくてもよいといいます。「最初は服とおむつ、沐浴(もくよく)用品といった最低限のものがあればOK。あとは退院後に、家族に頼んで必要な物を買い足せばいい、というくらいの気持ちでいましょう」と佐藤さん。

夫に求められる産後のサポートについて、佐藤さんは「立ち会いができないぶん、産後の一時期は『家事を全て担う』くらいの意気込みでいてほしい」。妻の不安に、よく耳を傾ける姿勢も大切だといいます。

2人目以降の出産の場合は、母親の入院中、上の子が面会できない場合があります。佐藤さんは「『病院のきまりで、中には入れないの』『赤ちゃんを連れて帰ってくるからね』と、入院中は会えないことを事前に伝えておくことが大切。退院後は、上の子の話をしっかり聞いてあげてください」とアドバイスしています。

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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