新生児聴覚検査、受検率アップ 早期発見、言語発達に重要 助成自治体増、追い風に

生まれたばかりの赤ちゃんに難聴の疑いがないか調べる新生児聴覚検査。任意検査で費用が自己負担のため、道内の受検率は従来低かったが、費用を助成する自治体が増えてきたことなどから、近年は全国平均に迫るほど高まってきた。難聴の早期発見は、適切な療育に向けてとても重要で、関係者はより多くの自治体の費用負担を求めている。

道内86% 全国並み

先天性の難聴は、千人に1~2人の割合で見つかるとされている。新生児聴覚検査は、出産した医療機関が、難聴の精密検査が必要かどうかを調べるスクリーニング検査で、日本産婦人科医会によると、2005年ごろから全国で本格的に始まった。

ヘッドホンなどで赤ちゃんに音を聞かせて脳神経の反応を調べる検査法と、外部の音に反応して耳の中の器官から出る反射音を分析する検査法があり、生後2日から退院前までに行われる。赤ちゃんに検査による痛みはない。道によると、検査費用は医療機関によって異なり、3千~8千円ほどという。

精密検査を実施する道立子ども総合医療・療育センターの浅沼秀臣医師(新生児内科)は、聴覚検査について「難聴は、生後6カ月から補聴器などで療育ができる。早期発見は言語の発達などに大きく関わるので、(聴覚検査による)スクリーニングは欠かせない」と力説する。

厚生労働省によると、新生児の受検率の全国平均は86.9%(18年度)。道内は16年は77.3%にとどまっていたが、18年は86.7%まで上昇、全国平均並みになった。

背景には、検査が可能な医療機関や検査費用を負担する自治体の増加がある。道によると、分娩(ぶんべん)できる道内の医療機関のうち検査が可能なのは93.2%(19年4月1日現在)で、日本産婦人科医会が全国の1795施設から回答を得たアンケート結果の全国平均の94.3%(16年度)に匹敵するまでになった。

また、検査費用を助成する道内の自治体は、18年度は40市町村だったが、20年度は129市町村まで増加した。このうち費用全額を助成しているのは66市町村。残りは一定額の助成で、札幌市は3千円を上限に助成している。

道内で費用を助成している市町村の割合は72.1%で、厚労省が18年度に調査した20年度までの実施予定を含めた全国平均の55.0%を大きく上回っている。

日本産婦人科医会のアンケートでは、検査費用を助成している自治体の施設は、助成のない自治体の施設よりも受検率が10ポイント以上高いというデータもある。

浅沼医師は「検査の重要性を妊婦に認識してもらうとともに、費用を助成する自治体が増えることが受検率の向上につながる」と強調。各自治体に費用助成を呼びかける立場の道も「今後は財政状況など自治体の個別の問題点解消に向けてサポートし、(道内の)受検率を100%に近づけていきたい」(子ども子育て支援課)としている。

また、北海道産婦人科医会理事で札幌西レディースクリニックの寺沢勝彦理事長は「聴覚検査をする医師や医療従事者の技術をさらに高めて、精密検査を実施する医療機関といかにスムーズに連携していくかが次のステップになる」とみている。

取材・文/安宅秀之(北海道新聞編集委員)

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