良い睡眠へ まず早起き 朝食よくかみ運動しっかり

(写真はイメージ=PIXTA)

毎朝、子どもを起こすのに一苦労―。そんな家庭は少なくないでしょう。睡眠は脳や体の発達に影響する大事な要素ですが、寝不足の子どもが増えています。新年度がスタートしたこの時期、質の良い睡眠をとり、規則正しい生活リズムを身につけるにはどうしたらいいか、専門家に聞きました。


「朝なかなか起きず、いつも眠そうなんです」。札幌の会社員吉田純恵さん(34)は、4月に小学1年生になった長男(6)の睡眠が気になっています。これまで通っていた認定こども園は午前9時ごろの登園だったため、8時過ぎまで寝ていることが多かったそうです。今は学校の始業に間に合うよう、7時前に起こそうと声を掛けますが、布団からしばらく出てきません。「夜は『眠くない』と言って10時過ぎても寝ない」と悩んでいます。

夜眠くなる習慣を

睡眠について研究する北大教育学部准教授の山仲勇二郎さん(時間生物学)は「夜になると眠くなり、朝は自然と目覚めるのが理想的な睡眠。日本の子どもは世界的に見ても睡眠時間が少ないです」と話します。

山仲さんによると、1日に必要な睡眠時間は個人差はありますが、乳児であれば12~17時間、幼児で10~14時間、小学校低学年で9~11時間が目安といいます。しかし、ベネッセ教育総合研究所の2013年調査では、小学生の平均睡眠時間はこの目安より短い8時間33分で、5年前の調査より3分短くなりました。半数以上が、起床時間は午前6時台と早く、就寝時間は午後10時以降でした。

山仲さんは「子どもの体を作る成長ホルモンは、睡眠時に最も多く分泌されるため、質の良い睡眠をとることが大事。夜に自然と眠くならないようなら、生活習慣を改善しましょう」とアドバイスします。

まずは、早起きから始めると生活リズムを整えやすいです。朝起きたら光を浴びること。人間は、朝目覚めて太陽光を浴びてから、14~15時間後に眠気を誘うメラトニンというホルモンが出るよう体内時計がセットされています。午前7時に起床すれば、午後9時ごろから徐々に眠くなります。できるだけ毎日同じ時刻に起きるのがポイントです。

朝食を食べると脳がさらに覚醒します。日中は体を動かしましょう。脳と体の活動量を増やすと質の良い深い眠りにつながります。

ゲームやスマートフォンで動画を見ると、脳が覚醒するだけでなく、メラトニンの分泌も抑制され、かえって眠れなくなる可能性があるため、寝る2~3時間前は控えましょう。このサイクルを続けるうちに規則正しい生活リズムが刻めるようになるといいます。

子どものより良い睡眠のための5か条

昼寝するなら短め

昼寝は午後3時までに済ませたいです。長く取り過ぎると、年齢によっては、夜の就寝時間が遅れ、生活のリズムを崩す一因にもなるといいます。

札幌国際大教授の深浦尚子さん(幼児発達心理)は「4~5歳児からは体力が付いてくるので昼寝は必要ありません」とし、眠気を抑えられない場合は、午後3時より前に、15~20分の仮眠をすすめます。

睡眠不足が蓄積する「睡眠負債」の状態が続くと、集中力や判断力、記憶力の低下につながるとされます。深浦さんは「子どもがぐずったり、イライラしたり、『やる気が出ない』『頭がぼーっとする』などと訴えた場合、寝不足が原因の可能性があります」と指摘します。

深浦さんが3月まで園長を務めていた札幌市内の幼稚園では、睡眠不足で疲れが取れないのか、朝からぐったりした様子の園児が一定数いたといいます。「低年齢であるほど、親の生活の影響を受けやすいです。子どもが正しい生活リズムを刻めるよう、家族で意識的に取り組むことが大切」と話します。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

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