就寝中の赤ちゃん死亡減らそう 11月は乳幼児突然死症候群(SIDS)の対策強化月間

写真はイメージ(AGLIM / PIXTA)

元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然亡くなってしまう乳幼児突然死症候群(SIDS)。過去10年間に道内で111人、全国で1091人の乳児が亡くなっています。はっきりとした原因は不明ですが、うつぶせで寝かせないなどの対策で発症リスクが減ることがわかっています。11月はSIDS対策強化月間。病気の特徴や注意点などをまとめました。

道内死亡率、全国平均の3倍

SIDSは、主に1歳未満の乳児がなりやすく、特に生後2~6カ月に多いといいます。何の予兆や既往歴もなく、直前まで元気だったにもかかわらず、突然亡くなるのが特徴で、日本での発症頻度は出生6千~7千人に1人と推定されます。厚生労働省によると、昨年は全国で75人の乳児が亡くなっており、乳児期の死亡原因としては先天性の病気や不慮の事故などに次いで4位でした。

SIDSに詳しい北海道科学大准教授の市川正人さん(小児看護学)によると、道内のSIDS死亡率は全国的にも高めです。道内では昨年8人の乳児が亡くなっており、死亡率は出生10万人当たり25.8人で、全国平均(8.7人)の約3倍。市川さんは「今年はコロナ禍で妊娠中の母親学級・両親学級が中止となっているケースが多く、十分に知識を得る機会がない可能性もある」と危惧します。

うつぶせ寝避けリスク低減

SIDSの予防方法は確立していないものの、発症リスクを下げるための三つのポイントがあるといいます。

SIDSを防ごう

一つ目は1歳になるまでは、うつぶせ寝を避ける。「うつぶせ寝、あおむけ寝のどちらにも発症例はありますが、うつぶせに寝かせると発症の危険性が高くなるため、医学上の理由でうつぶせ寝を勧められている場合以外は、あおむけに寝かせましょう」と市川さん。

二つ目は喫煙をしない。たばこは赤ちゃんの発育を抑制し、特に呼吸機能への悪影響があることがわかっています。両親だけでなく、周囲の人も赤ちゃんの近くで吸わないよう注意が必要です。

三つ目はできるだけ母乳で育てる。人工乳がSIDSを引き起こすわけではないですが、厚労省の研究では母乳の方が発症率が低かったといいます。

市川さんは「(うつぶせ寝や喫煙などが)直接の原因ではなく、やみくもに怖がる必要はありませんが、育児上の必要な知識として覚えておいてほしい」と訴えます。

敷布団硬めに

赤ちゃんを安心して寝かせるためにどんな点に注意したらいいのでしょうか。

北海道助産師会会長の高室典子さんは「SIDSに限らず、窒息を防ぐためにも敷布団は子供用の硬めのものを選んで」と話します。

赤ちゃんを安心して寝かせるポイント

赤ちゃんは生後すぐから足をバタバタさせ、反動で布団の上を動き回ります。顔に覆いかぶさらないよう、掛け布団や毛布を掛けるのは胸の辺りまで。周辺にはタオルや、ぬいぐるみなどの小物は置かないようにすることが大切だといいます。

赤ちゃんの成長は早く、それまでできなかったことが突然できるようになります。高室さんは「寝ているからと、赤ちゃんの側を長時間離れるのは禁物。なるべく目の届くところにいましょう」とアドバイスします。

悩まず相談を

赤ちゃんを亡くした親たちでつくるNPO法人「SIDS家族の会」北海道支部は、パンフレットなどを作り道内で啓発活動を続けてきました。SIDSは実態がわからないだけに、わが子を失って自分を責めたり、警察に虐待を疑われたりするケースもあり、家族の心の傷は大きいといいます。

家族の会では、流産や死産などで赤ちゃんを失った家族も対象に含め、電話で話を聞いたり、同じ境遇の人同士のミーティングなどの活動を札幌や旭川で開いています。代表の佐藤博子さんは「親だけではなく、医療や警察関係者など多くの人にSIDSを知ってほしい」と話しています。支部への問い合わせは(電)050・3643・6546(伝言専用。後ほど折り返し連絡)、電子メールcontact@sids.gr.jpへ。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

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