連載【0カ月からの育児塾】

〈妊娠期の働き方〉働く妊婦が安心して仕事を続けるために知っておきたいこと

写真はイメージ(naka / PIXTA)

働きながら妊娠、出産、育児をする女性が増えています。妊娠すると体も心も大きく変化し、働くことにも影響してきます。北海道助産師会会長の高室典子さん(札幌)に、職場への報告時期や週数に応じた体調の変化、働く時に気をつけたいことを聞きました。

心身の変化に合わせて制度を活用しよう

妊娠を職場にいつ報告すべきか、迷う人も多いでしょう。高室さんは「安定期に入ったらと思うかも知れませんが、妊娠初期のつわりや切迫早産などで、仕事に影響が出てくることもあります。確定を受けたタイミングで、まず上司や人事担当者といった最低限の人に伝えると良いと思います」と助言します。

パートナーには、月経が遅れたことを自覚した段階、他の家族には病院で心拍を確認できてから報告するよう、高室さんは勧めます。心が不安定な時期なので、家族に伝えるタイミングが早すぎるとプレッシャーを感じストレスになる人もいます。

妊娠中と産後の女性はホルモンの影響を受けて気分が上がったり下がったり、変動が激しくなります。仕事でキャリアを積んだ女性は、妊娠や出産で起こる現象を挫折だと感じることがあることも、頭に入れておいてほしいことです。

妊娠で起きる心や体の変化

心や体の状態は、週数によって特徴があります。初期はつわりのほか、眠気や集中力がなくなります。中期は精神的に落ち着きますが、無理をしやすい時期。後期はむくみ、足のつりなどのマイナートラブルがあり、ナーバスになりやすくなります。状況に合わせて、働き方を考えましょう。

妊娠した女性が働くにあたり、国は労働基準法や男女雇用機会均等法に基づき、勤務時間の短縮や軽い業務への転換などの制度を設け、必要な配慮を受ける権利を保障しています。

働く妊婦が利用できる主な制度

例えば、混雑した交通機関での通勤が、つわりの悪化や流産、早産にもつながることがあります。混雑を避けるために始業や就業を30分程度遅めたり早めたりできるよう、医師や助産師が記入する「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用して、職場に申し出ましょう。カードにはつわり、腰痛、全身倦怠感など現在の症状が記され、「長時間の立ち作業」「腰に負担のかかる作業」などの具体的な制限内容が示されます。勤務時間短縮や休業が必要なときは、医師らがその旨カードに記載してくれるので、職場に適切な対応を求めることができます。

通勤緩和などが必要な時に、医師らが発行する「母性健康管理指導事項連絡カード」

通勤緩和などが必要な時に、医師らが発行する「母性健康管理指導事項連絡カード」

通常、発行は有料で、料金は病院などにより異なります。

こうした権利や産前産後休暇、育児休業などの制度について紹介している、厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」も役立ちます。つわり、貧血など妊娠中の症状に合わせて、企業側がどう対応すべきかの対応例も掲載されています。

出産したら、職場にも忘れずに伝えましょう。産後の体調や、赤ちゃんの状況なども報告すると良いです。「産後の体の回復状況は個人差があります」と高室さん。復帰の時期を決めておいても、体調や保育所が決まらないなどの理由で、育児休業が延びてしまうこともあります。

働く女性が安心して出産、育児ができるための法律や制度は徐々に整備されています。高室さんは「働いていても、妊娠を続けることを楽しみながら過ごせたらいいですね」と話しています。

\動画でも詳しく解説しています/

取材・文/石橋治佳(北海道新聞記者)

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