なぜか大泣き、着替え拒否…「登園しぶり」悩ましく 受け止め、安心感持たせて

写真はイメージ(yamasan / PIXTA)

泣いて登園を嫌がったり、着替えを拒否したり―。保育園や幼稚園などに通う子どもの「登園しぶり」にはさまざまな要因や背景が考えられ、新入園時だけに起きるとも限りません。園生活に慣れてから、休み明けや行事前、環境の変化などで嫌がる可能性もあります。専門家は「保護者だけで悩まず、園や専門機関などに相談を」と助言します。家庭でどう向き合えばよいか、mamatalk読者の体験から考えました。

月曜日を嫌がる

「これまで登園しぶりは見られなかったので、自分が悩むとは思いませんでした」。札幌市の幼稚園教諭阿部陽子さん(34)は打ち明けます。6カ月から認定こども園に通う長女(3)が、今年5月の大型連休明けから、「行きたくない」と言うようになりました。連休中にお花見や公園巡りなど外出が多かったため、「毎日、おでかけしたい」と思っているようです。年少になってからは曜日の感覚がわかるようになり、特に月曜日を嫌がります。

けれど、共働きのため、毎日、長女の希望通りに過ごすことは難しいといいます。阿部さんは長女が登園したくなるよう、毎日の声かけに気を配り始めました。例えば「バイバイ」と手を振って別れたのを、「後で迎えに行くから」などと前向きになれるような言葉を選んでいます。こども園の先生も、長女が登園すると抱っこして迎えるなど対応してくれます。良い方向に向かいつつあるといいます。

子どもが登園をしぶったら…

旭川市の専業主婦仲美枝(みき)さん(43)の長男(5)は3歳で幼稚園に入園してから昨夏まで登園しぶりでした。着替えを嫌がったり、大泣きしたり。手を引いて登園させたこともあります。長男は「パパっ子」で、夫の言うことはぐずらずに聞くことが多いといいます。長女(2)を出産後1カ月は、夫が出勤時間を遅らせ、長男の送迎を担当してくれましたが、毎日は難しいといいます。長男が登園をしぶると、仲さんは「気持ちがいっぱいいっぱい」になって怒りっぽくなり、その後に振り返って、後悔することもありました。

昨春、園の先生から「登園時に、お気に入りのおもちゃを持たせてみては」と提案されました。長男は先生にミニカーを見せることを楽しみにするようになり、登園を嫌がらなくなりました。仲さんは「先生の助言が役立った」と感謝します。

十勝管内音更町のパート従業員牧純子さん(42)の三男(2)は、今年5月の大型連休明けから登園しぶりが現れ始めました。7カ月から保育園に通っていましたが、今年4月に転園。スムーズに転園できたと思っていましたが、前の保育園を恋しがるようになりました。

以前、通っていた園の保育士は「お母さんと離れたくないよね」と気持ちに寄り添ってくれ、三男も良くなつきました。牧さんはそうした対応を思い出し、「子どもの思いや葛藤をわかってあげることが大切」と感じました。子どもが前の園の話をしたら、「わかるよ。ママも行きたい」と共感し、思い出話をするなど、試行錯誤を続け、2週間ほどで今の園に慣れたといいます。

周囲に相談大事

「登園しぶりを解消する魔法の言葉はありません」。北海道医療大心理科学部准教授の今井常晶さん(61)=発達心理学=はそう話します。登園しぶりの理由がわかり、解決できれば良いですが、未就学児は自分の気持ちを言葉で表すことは難しいです。そのため、まず子どもの気持ちを受け止め、スキンシップをとったり、一緒に遊んだりして「安心感を持たせることが大事」といいます。

道臨床心理士会副会長の本阿弥はるなさん(48)も子どもへの接し方で大切なのは「気持ちに共感すること」と話します。登園しぶりは「子どもが新しい環境に慣れるために頑張る姿と捉え、長い目で見守って」と呼びかけます。

また、保護者の心理状態が子どもに影響する場合があるため、悩みを抱え込まず園に相談することが大事といいます。子どもの心身に症状が出たり園の活動に全く参加できなかったりする場合は、過大なストレスがかかっている場合や、発達上の課題がある場合も考えられます。本阿弥さんは、園に話しづらいケースであれば、保健センターなど専門機関への相談を勧めています。

取材・文/田口谷優子(北海道新聞記者)

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