海や川、プール 楽しいけれど・・・水の事故に注意

写真はイメージ(mori / PIXTA)

今年の夏は海や川、プールに出掛ける計画を立てている人も多いでしょう。小さな子どもを連れて行く際、気をつけたいのは水の事故です。子どもにとっては危険なのはどんなことなのか。大人は何に注意すればいいのか。専門家に聞きました。


「長女が5歳のころ、プールで浮輪に乗せていたら、バランスを崩して後頭部から水に落ちてしまいました」。札幌市中央区の主婦(47)は振り返ります。隣にいてすぐ引き上げましたが、長女はパニック状態に陥っていたといいます。「水遊びはより慎重に、そばを離れないことが大事だと痛感しました」

道警によると、通報があった6歳以下の夏の水難事故は、2021年に海で1件ありましたが命に別条はなく、22年はゼロでした。

ただ、道内では12年に5歳の男児が屋内プールで溺れて死亡。06年には埼玉県ふじみ野市で流水プールの吸水口のふたがはずれ、7歳の女児が吸い込まれて亡くなっています。

日本赤十字社北海道支部(札幌)によると、大人が特に注意する必要があるのは<1>屋外では気象情報を把握する <2>小さな子どもにとって危険な場所や状況を知っておく <3>子どもから目を離さない―の3点です。

上流で大雨が降れば、川は急に増水します。水の事故防止などを指導する同支部職員の生田洋樹さん(44)は「天気によっては、海や川に行かないなど計画の中止も考えて」と話します。

大人にとっては何でもなくても、プールの深さが変わる境目など、小さな子どもにとっては大きな危険が潜む場所があります=グラフィック=。生田さんは「遊ぶ前に、大人は周囲を確認して」と助言します。

子どもの事故予防などを指導する同支部職員の永沢貴博さん(41)は「水深がわずか5センチでも、子どもは口や鼻がつかり、溺れる恐れがあります」と指摘。子どもが浅瀬の人混みでぶつかって倒れるケースなどもあり、注意が必要といいます。

溺れたら音や声がするはずだという思い込みも危険といいます。「溺れ始めると口に水が入り、声を出せず静かに沈むことも多い」と生田さんは語ります。

大勢で出掛けると、誰かが子どもを見ているだろうと油断しがちになります。常に目を離さず、水遊びの間は飲酒もしないことが事故防止には不可欠です。

心肺蘇生 適切な動きを

乳児の人形を使って胸骨圧迫の方法を説明する永沢貴博さん

乳児の人形を使って胸骨圧迫の方法を説明する永沢貴博さん=日本赤十字社北海道支部

もし、子どもが溺れたらどうすればいいのでしょうか。意識がない場合は119番はもちろん、その場での心肺蘇生が欠かせません。

日本赤十字社北海道支部によると、胸骨圧迫は1歳未満の乳児は指2本、1歳以上6歳未満の幼児は手のひらの手首寄りの部分を胸の真ん中に当て、垂直に押し下げます。人工呼吸は乳児は鼻と口を大人の口で覆い、幼児は鼻をつまみ口を覆います。

注意点は<1>胸骨圧迫は押し下げた胸が元の高さに戻ってから、次の圧迫をする <2>人工呼吸は気道を確保できているか確認する―の二つです。支部職員の永沢貴博さんは「とっさの時に適切に動けるよう、年1回は講習を受けて」と呼び掛けます。

心肺蘇生の方法は、日本赤十字社がYouTubeで乳児対象幼児対象を配信しています。講習会も開いており、内容や日程は北海道支部のホームページで確認できます。料金などの問い合わせは同支部へメール(kyuugo@hokkaido.jrc.or.jp)で。

取材・文/山田芳祥子(北海道新聞記者)

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