【油断できない冬の日焼け】紫外線の反射による「雪焼け」にも注意! 皮膚科医が教える、冬のUV対策

スキーやスノボ、そり遊び−。冬も元気にアウトドアを楽しむ人が多い北海道。夏に比べると太陽からの紫外線量は減りますが、冬も日焼け止めを塗って対策をすることが大切です。特に北海道では、雪からの照り返しによる「雪焼け」にも注意が必要。美しい肌を保つための冬の紫外線対策を、「ことに皮フ科クリニック」(札幌市西区)の志貴美麗院長に聞きました。

教えてくれたのは

志貴美麗先生

ことに皮フ科クリニック院長

しき・みれい/北海道旭川市出身。日本皮膚科学会皮膚科専門医。秋田大学医学部卒業後、札幌で病院勤務などを経て、2021年より札幌市西区「ことに皮フ科クリニック」院長。アトピーやニキビなどの一般皮膚科や小児皮膚科、レーザーなどの美容皮膚科などの診療を行う。夫と3人の娘、ハムスターと暮らす。

冬の北海道でも日焼け止めが必要な理由

紫外線は1年中降り注ぐ上、雪国では紫外線が雪に反射することによる「雪焼け」も。冬も適切に日焼け止めを使用し、肌をダメージから守りましょう。

① 紫外線は1年中降り注ぐ

紫外線は1年中降り注ぐ

日差しの強い夏は日焼け対策をしていた人も、紫外線量の少ない冬はあまり気にしていないかもしれません。赤くなったり皮がむけたりといった夏のような肌の変化は、冬には見られないので気を抜きがち。

しかし志貴先生は「紫外線は冬の間も降り注いでいます。肌の老化の原因のうち8割は、紫外線によるシミ・シワ・たるみといった『光老化』。適度に紫外線を浴びる日光浴は健康にも良いとされますが、対策をしないと、知らず知らずのうちにたくさんの紫外線を浴びることに。肌がダメージを受け、シミ・シワの原因となったり、肌トラブルにつながったりする可能性があります」と指摘しています。

② 雪の照り返し「雪焼け」

雪の照り返し「雪焼け」

私たちが浴びる紫外線は、直接太陽から届くものだけでなく、空気中で散乱して届くもの、さらに、地面等で反射して届くものがあります。冬は、地面に積もった雪は太陽光を反射するため、照り返しによっても紫外線が肌に当たります。

環境省の「紫外線環境保健マニュアル2020」によると、地表面の紫外線反射率は、新雪で約80%と、アスファルト約10%のおよそ8倍。雪の反射による日焼け(=雪焼け)で、肌はダメージを受けてしまいます。

スキー場など標高が高く紫外線の影響を受けやすい場所ではもちろんですが、普段の暮らしでも、「雪焼け」の対策をして肌を守りましょう。

③ くもりでも、雪でも、室内でも

くもりでも、雪でも、室内でも

晴れの日だけでなく、くもりや雨、雪の日も紫外線は、雲を通過して肌にダメージを与えます。また、波長の長いタイプの紫外線UVAは窓ガラスを通り抜ける特性があるため、室内にいても、窓際の紫外線量は屋外の約80%におよぶといわれています。車内も同様で、日々の運転の積み重ねで、気づいたら右頬にばかりシミが…なんてことも。

冬に使う日焼け止めの選び方

乾燥しがちな冬は、どんな日焼け止めを使用するといいのでしょうか。種類や、選び方のポイントをまとました。

冬のデリケートな肌には低刺激のものを

冬のデリケートな肌には低刺激のものを

日焼け止めには大きく2種類、「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」があります。紫外線吸収剤は、皮膚の表面で紫外線を吸収し、化学的にエネルギーに変えて放出。紫外線を防ぐ力が強く、無色透明で塗りやすいですが、肌への負担が大きくかぶれやすいのが特徴です。

一方の紫外線散乱剤は、皮膚の表面で紫外線をはね返して、紫外線が肌に当たるのを防ぎます。紫外線吸収剤と比べて肌に優しく、トラブルを起こしにくいメリットがありますが、物によっては白浮きしやすく塗りにくいというデメリットも。冬は乾燥して、肌もデリケートになりがち。「生活シーンに合わせつつ、基本的に“紫外線散乱剤のみで作られた紫外線吸収剤不使用のもの”を選ぶといいでしょう」と先生は勧めています。

市販されている日焼け止めのうち紫外線散乱剤のみで作られたものには、「紫外線吸収剤不使用」や、「紫外線吸収剤フリー」、「ノンケミカル処方」などと表示されています。表示がない場合は、酸化チタン、酸化亜鉛などの成分が表記されているか確認を。製品によっては「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」両方の成分が含まれているので、成分表示を確認して、自分の肌に合ったものを選んでください。

冬は「SPF20〜30、PA++」がおすすめ

冬は「SPF20〜30、PA++」がおすすめ

紫外線は波長によって主に「UVA(紫外線A波)」と「UVB(紫外線B波)」に分けられます。UVAは、皮膚の奥深くまで届いて主にシワやたるみの原因に。UVBは、皮膚の浅い部分に届き、しみや皮膚がんなどの原因になることがわかっています。

日焼け止めの効果を示す「SPF」はUVBに対する指標で、「50+」が最大。数値が高いほど効果が続きます。「PA」はUVAに対する指標で、「+」~「++++」の4段階あり、+が多いほど効果が高くなります。「冬の普段使いには、肌にやさしいSPF20〜30、PA++程度の日焼け止めがおすすめです」と先生。

テクスチャーはお好みで

日焼け止めには、クリームやミルク、ローションなどのタイプがあります。毎日使うものなので、自分好みのタイプを見つけるのが一番。乾燥しやすい冬は、保湿成分入りの化粧下地を使うなど、乾燥対策にも気をつけましょう。日焼け止め成分入りの下地やファンデーションもおすすめです。

日焼け止めの正しい塗り方

日焼け止めの正しい塗り方

健やかな肌を保つためには、日焼け止めを正しく塗ることが大切です。志貴先生におすすめの塗り方についても聞きました。

適量は? 塗りなおしの頻度は?

日焼け止めの適量は、顔だと、クリームタイプで真珠大2個分、ローションタイプだと500円玉1個分が目安です。白浮きする場合は、2〜3回に分けて重ね塗りを。一般的には2〜3時間おきの塗り直しが良いとされていますが、紫外線を浴びる時間の長さにもよるので、ライフスタイルに合わせて臨機応変に。

先生おすすめ「手の甲塗り」

毎日使う日焼け止め。「たるみや肝斑(かんぱん)の原因になるので、塗るときにこすらないのがポイントです」と先生。おすすめの塗り方は、摩擦の少ない「手の甲塗り」。手のひらではなく、手の甲を使って日焼け止めを塗ります。

手のひらを使うと、指の間やシワに入り込んで40%もの日焼けどめが失われるという調査報告もあり、手の甲を使えば無駄なく塗れるというメリットも。塗り終わったあとの手を洗わなくて済むのも◎。

手の甲塗り

あなたにピッタリな日焼け止めは?

利用シーンや肌質に合わせて日焼け止めを選ぶと、より効果的に肌を守ることができます。タイプ別に、先生のおすすめ商品を聞きました。

敏感肌さん、インドアさん

敏感肌の人や、屋内で過ごすことが多い人には、お湯で落とせるタイプがおすすめ。

お湯で落とせるミルクタイプの日焼け止め。みずみずしい使い心地で落としやすく、全身にも使いやすいのが特徴です。外出が多くない日や、一日中家で過ごすときの日焼け止め対策に◎。紫外線吸収剤不使用。

子どもと雪遊び&ウィンタースポーツさん

雪焼けの心配がある時は、紫外線をしっかりカットしてくれるタイプを。

伸びがよく、なめらかな使い心地で、紫外線をしっかりカットするクリームタイプの日焼け止め。ウォータープルーフなのに石けんで落とせて、しっとりした使い心地です。紫外線吸収剤不使用。

メイクしてお出かけさん

仕事や買い物など普段使いなら、肌に優しく、好みの使い心地のものを選びましょう。雪焼けの心配がある時は、紫外線をしっかりカットしてくれるタイプがおすすめ。

肌を紫外線から守りながら、さらさらに保ってくれる全身用パウダー。石けんで簡単にオフできます。日焼け止めにありがちなべたつき感がなく、ポンポン容器タイプなので手軽にメイクの上に重ねて使用できます。紫外線吸収剤不使用

紫外線と上手に付き合うには

紫外線と上手に付き合うには

日焼けをしてしまったら、まずは冷やして、肌の炎症を抑えましょう。保冷剤をタオルで包んで、赤くなった部分に当ててください。それから、刺激の少ない保湿剤を塗って、冬は特に肌を乾燥から守りましょう。ヒリヒリ痛む場合は、冷やさず保湿だけでOK。また、短期的には効果は得られませんが、普段からビタミンCやビタミンEを摂取することでも日焼けのダメージが減らせます。

一方、紫外線対策は大切ですが、極度に日光を避けているとビタミンD不足によるくる病(骨軟化症)や、ホルモンバランスの乱れなどの弊害にもつながります。先生は「冬は紫外線が弱く日照時間も短いので、適度な日光浴は健康のために効果的。住んでいる地域や季節、戸外に出る時間帯など、正しい知識で紫外線と上手に付き合っていきましょう」とアドバイスしています。


取材・文/猪飼佳奈子 撮影/國枝琢磨(静物) グラフィック/TOMO AND JERRIE
※価格はすべて編集部調べの税込価格

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