連載コラム「あそぶ→そだつ」第22回

【あそぶ→そだつ】「手伝って」「いいよ」の価値

札幌市内の認定こども園で、3歳の女の子と2歳半の男の子が積み木で遊んでいました。女の子はライオンとクマの家を、男の子はキリンとダンゴムシの家を作っているようです。

女の子の手が止まりました。どうやら出来上がったようです。男の子の方は積み木をいくつか運んできて「ダンゴムシが寒いから、手伝って」と女の子にお願いしました。女の子は「いいよ」と快く答えます。男の子は屋根を作ること、そしてその作り方について説明し、2人のちょっとした共同作業が始まります。

3歳前後になると、2人のように一緒に遊ぶことが増えてきます。ただ、考えや思いが必ずしも一致するわけではありません。積み木を運んできた女の子に、「もういらない」と伝えたり、女の子が作り始めた入り口を「いいね」と認めたり、「ダンゴムシだってわからないから」と意味づけしたりと、違いや思いを共有しながら、入り口や扉、看板まで作って完成。2人とも満足そうな表情です。

この2人のように、言葉を交わしながら、お互いの考えを調整して遊びを進めていくことは、今後、社会の中で他の人とやりとりしながら活動していく時の大切な経験となります。また、遊びの中で他の人に何かお願いしたり、快く手伝ってもらったりする体験は、生きていく上で価値のある経験だと考えます。

頑張っても、一人ではうまくいかないことがあり、誰かの助けが必要な時もあります。他の人に助けを求めることができ、また求めに対して手を貸せること、そういった力も生きていく上で役に立つでしょう。子ども同士の関わりは大人との関わりの中では体験できないことがあります。誰かと遊ぶ体験が豊かに行われることで、社会性の発達も期待されます。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

Area

北海道外

その他