遊びも勉強も目を大切に! 子どもを近視から守る、デジタル機器との上手な付き合い方

写真はイメージ(Fast&Slow / PIXTA)

教育現場でタブレット端末などデジタル機器の導入が進む中、視力の低下や近視が認められる子どもが増えています。スマートフォン所有の低年齢化で、画面を見る機会が増えたことも要因とみられます。近視になると病気のリスクが高まることも分かってきました。専門家は「目の負担を抑えるため、機器の使い方を身に付けて」と呼び掛けています。

デジタル機器の多用で視力低下の子ども増加

小中学校では2020年度、1人に1台の端末が導入され、授業や宿題で毎日のように機器に触れています。文部科学省が今年4月に行った全国学力・学習状況調査によると、前の学年までに受けた授業での情報通信技術(ICT)機器の使用頻度について、ほぼ毎日と答えた道内の小学6年生は32.5%、中学3年生は23.3%でした。家でテレビや携帯ゲーム機、スマートフォンでゲームをする時間も長く、小6の57.7%、中3の55%が平日で1日2時間以上画面を見てゲームをしていました。

道内の小中生がテレビやスマートフォンでゲームをする時間

北海道教育委員会が3年ごとにまとめる学校保健調査によると、近視の可能性があるとされる裸眼視力1.0未満の子どもの割合は、20年度に中学校で53.83%(前回比9.9ポイント増)、高校では67.35%(同7.19ポイント増)に上りました。幼稚園では前回から14.85ポイント増え35.97%となるなど、急増した年代もありました。眼科の学校医でもある川沿眼科(札幌市南区)の天野珠美院長(59)は、「昔よりも近くを見ることが多い生活になっていることで、目への負担が増えている」と指摘します。

道内の裸眼視力1.0未満の子どもの割合

近視で高まる目の病気のリスク

目はカメラのような構造で、レンズの働きをする水晶体が膨らんだり細くなったりして、網膜でピントが合うように調節しています。近い距離を見るときはピントが網膜よりも奥になり、この状態が続くと目の形を変えて調節しようと眼球の形が前後方向に長くなってしまいます。ピントが合う位置が網膜より前になっている状態が近視で、近くのものははっきり見える一方、遠くのものがぼやけて見えます。

目が見える仕組み

近視は視力が低下するだけでなく、将来の目の病気のリスクが高まることも分かってきました。海外の研究によると、近視がない場合と比較して、近視が強いと病気のかかりやすさは白内障で5倍、網膜剥離で22倍にもなるといいます。天野院長は「近視はメガネをかけて済む問題ではなくなっている」と強調します。

近視になると

見る作業では30センチ以上離し、30分に1回休む

近視の要因は「遺伝」と「環境」にあるとされます。進行を抑え予防に効果的なのが、目を使う環境を見直すことです。日本眼科医会が作成した啓発資料によると、近くを見る作業では少なくとも30センチ以上離し、30分に1度は遠くを見て目を休ませることが重要だといいます。

屋外の光も有効

また、太陽光を構成し紫外線に波長が近い「バイオレットライト」を屋外で浴びると、近視の抑制につながることが慶応大の研究で分かってきました。蛍光灯や発光ダイオード(LED)の照明には含まれないため、木陰や曇りの日でも1日2時間ほど屋外にいることが、近視の予防に有効とされています。

目は一生もの、自分で守る意識を持って

天野院長は学校ぐるみで屋外での授業や遊びの時間を確保する方法も提案しつつ、「目は一生付き合って行くもの。自分の目は自分で守る意識を持ってほしい」と強調します。保護者が散歩に誘ったり、機器を使うルールを話し合ったりすることが、目の健康を考えるきっかけになります。

ICT機器を使う時は

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文部科学省が21年度に初めて行った近視の詳細な実態調査では、冬の積雪によって屋外にあまり出られない地域や外遊びが難しい都会などで、裸眼視力1.0未満の割合が高いことが分かりました。これから積雪期に入る道内では、意識的に外に出ることが必要です。

天野院長は、健康診断で子どもの視力の低下が認められたり、ものを見る時に目を細める様子が見られたりする場合は、速やかに眼科を受診するよう呼び掛けています。

取材・文/光嶋るい(北海道新聞記者)

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