乳幼児の予防接種、計画的に コロナ、インフルも検討対象

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感染症の流行を防ぐための子ども向け予防接種は多くあり、特に2歳までの乳幼児期に集中しています。乳幼児期の定期接種の種類は、10年前に比べて3倍に増え、親はスケジュール調整に悩みがちです。今冬は、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行も懸念され、接種すべきか考えるワクチンが増えそうです。どの予防接種も強制ではなく、発症予防などのメリットと副反応などのデメリットを考慮し、各家庭で選ぶもの。予防接種の仕組みや、接種の判断材料について専門家に聞きました。


「定期接種は1歳までに15回以上。長男は1日で五つの同時接種をしたこともあります」。札幌市中央区の主婦金子有紗さん(36)はそう大変さを話します。1歳2カ月の長男は来月から保育園に通う予定で、集団活動に備えて、定期接種の対象ではないインフルエンザワクチンも打つ予定です。

道感染症対策局によると、予防接種には、公費助成がある定期接種と、自己負担で受ける任意接種などがあります。このうち2歳までの定期接種は、肺炎球菌など9種類(混合ワクチンなどは1種類とした計算)。感染症にかかりやすい年齢や、予防に効果的な時期などを考慮し、接種を推奨する時期が決められています。

2歳までに接種可能なワクチンの推奨スケジュール

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同じ種類のワクチン接種を複数回受ける場合、決められた間隔を守る必要もあります。例えば4種混合ワクチンなら、1~3回目はそれぞれ20日以上あけ、4回目を接種するためには3回目の接種後6カ月以上の間隔が必要とされています。

コロナワクチン接種の場合、2023年1月13日までに1回目を

コロナワクチンなどが加わると、さらに複雑になります。日本小児科学会は今秋、生後6カ月から4歳までの全ての子どもにコロナワクチンの接種を推奨すると発表しました。接種を希望する場合は、来年3月末までに、接種間隔をあけて計3回打つ必要があるため、原則1月13日までに1回目を接種することになります。接種間隔は1回目の後3週間、2回目の後は8週間以上とります。2回接種するインフルエンザワクチンの間隔は2~4週間です。

コロナワクチンと同時接種するなら、インフルエンザワクチンは可能ですが、それ以外は現在、安全性に関するデータが十分確認できないため、緊急の場合を除き、前後2週間の間隔をあけなければなりません。

インフルエンザワクチン、コロナワクチンを接種する場合

特にコロナワクチンは副反応への懸念などから、子どもの接種実績は伸びていません。育児アプリを開発する「カラダノート」(東京)は今月、0歳以上の子どもがいるユーザー215人を対象にアンケートを実施しました。コロナワクチンを「接種する」としたのは約1割、インフルエンザワクチンを「接種する」は約5割、コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種は約1割でした。

集団活動をする必要のない1歳未満の子どもは「定期接種優先」

何を重視して接種を考えればよいのでしょうか。北海道医師会の常任理事で、北海道新型コロナウイルス感染症対策有識者会議のメンバーでもある札幌市内の小児科医、三戸和昭さん(71)は、1歳未満で、集団活動をする必要がなければ「定期接種を優先して」と助言します。コロナやインフルエンザに対しては「(子どもの場合)家庭内感染が考えられるため、家族がワクチンを接種し、感染予防に気をつけることが大切」と言います。

三戸和昭さん

三戸和昭さん

一方、子どもが1歳以上だったり、集団活動をしたりする場合は、コロナやインフルエンザのワクチン接種を検討し、「受けるなら体調の良い時に、早めの接種を」とアドバイスします。

ただ、予定通りに接種できるとは限りません。発熱などの体調不良や、外出自粛要請などにより接種を控える可能性もあります。

定期接種が遅れた場合、救済措置があります。国は、コロナに感染したり、定期接種のため病院に行く方が感染リスクが高いと市町村が認めたりした場合などは、予防接種の大半の種類については一定程度の延期を認めています。道は「判断に迷うことがあれば、かかりつけ医に相談をしてほしい」と呼び掛けています。

アプリの利用広がる

ワクチンノート

子育て世代の中には、民間会社などが開発したアプリを使い、予防接種のスケジュールを管理する人もいます。数種類があるとされ、このうち「カラダノート」は、接種記録などがわかるスマホ向け無料アプリ「ワクチンノート」=写真=を2019年に開発しました。ダウンロードは約70万に達したと言います。現在は乳幼児期を中心に、定期接種10種(ロタウイルスは2種類と計算)と任意接種2種が対象ですが、年内にも、ユーザーが接種したいワクチンを自由に追加できる機能を加える予定です。

取材・文/田口谷優子(北海道新聞記者)

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