美瑛の子、全ての自立目指す 通級指導教室、小中生6人に1人利用 学習、言葉の発達支援

美瑛東小の通級指導教室「そだちの教室」で語句の書き方について学ぶ児童

【美瑛】発達の遅れや障害の不安がある児童生徒が利用する通級指導教室。美瑛町は「全ての子どもに自立のための教育を」の目標を掲げて利用のハードルを下げ、学習支援や言葉の発達などを支援する三つの教室を設け、約640人いる小中学生の6人に1人が通う。就学時健診で親子の不安をくみ取り、個別の成長記録を作るなど細やかなサポートで子どもが自立するまで見守る。

美瑛小の「ことばの教室」に週に1回通う小学6年鈴木義暁君(12)は低学年で大人向けの科学雑誌を読めたが、漢字を書くことは苦手だった。「教室でじっくりお手本をまねしたりして、自分の名前が漢字で書けるようになった」と自信を持てた。母親の結さん(38)は「通級指導教室に伴う面談で、漢字で名前が書けなかったことを話したところ、漢字を書くことに関心が持てる授業をしてくれた」と話した。

長女玲衣さん(9)も通った経験があり、自分の考えを伝えるのに時間がかかることに対し「先生がゆっくり話を聞いてくれ、『考えているので待ってくださいと相手に言えばいいよ』と教えてくれた」という。結さんは「勉強ができる子や、得意なことがある子でも困っている子はいる。その子に合わせて指導してもらえる」と感謝する。

地域の小中学校には通常学級、障害のある子が通う特別支援学級があり、通級指導教室には学習や生活面に不安や困難を抱える子が通う。通常学級に在籍しながら、必要に応じて個別指導を受けられる。

美瑛東小には学習を支援する「そだちの教室」がある。授業内で数分間、トランポリンを跳んだり、天井から下がるぬいぐるみにタッチしたりするなど簡単な運動も取り入れる。体幹や眼球運動を鍛えることで、姿勢を保ったり、黒板やノートを見比べたりという学習に集中するために必要な能力を養うためだ。担当の大西美紀教諭は「児童が自分の課題や得意なやり方を身につけていくことが通級指導の要」と強調する。

美瑛中には中学生対象の「すだちの教室」がある。思春期の悩みなどに寄り添いながら自立を促す。

道教委によると、道内の通級指導は本年度は7117人、全体の2%が利用する。美瑛は現在107人、16%ほどで、美瑛以外の上川中部8市町の0~10%(5月現在)と比べても高い。

旭教大で特別支援教育を研究する蔦森英史准教授は「利用者の多さは支援が望ましい子どもを取りこぼさない町の姿勢の表れ」と評価。専門教員7人を配置する町教委が子育て相談などを積極的に受け、親に通級指導の説明を丁寧に行うことで「利用への心理的ハードルを下げている」とみている。

この体制を下支えするのが、誕生時に発行される1人1冊の子育てファイル「すとりーむ」。高校卒業までの子どもの成長や教育の記録を基に、性格や行動の特徴も追加できる。ファイルは小中学校や子ども支援センターなどに共有され連携しながら、成長を支援することができる。2009年の「そだちの教室」開設と同時に仕組みができ、幼少期から子どもたちの成長をまちぐるみで見守る。

町教委の目良久美参事は「目標は全ての子どもたちが自分にあった教育を受け、将来的に自立する力を身につけること。通級指導教室はその中の選択肢の一つ」と話した。(菅沢由佳子)

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