成長の証しを絵本に残そう 描いて、切って、貼って…親子で挑戦

山田さんが作った「飛び出す仕掛け絵本」

山田さんが作った「飛び出す仕掛け絵本」

単純な点と線の組み合わせなどから、人や動物の姿が描けるように―。幼児が描く絵は日々、「進化」しています。今しか描けない絵を絵本の形で残してみましょう。保護者が手伝って、子どもも挑戦できる絵本の作り方を専門家に聞きました。


「長女が6歳の時、アニメのキャラクターが登場する絵本を1人で作って見せてくれ、驚きました」と、札幌市豊平区の主婦(40)は振り返ります。落書き帳に数ページ、色鉛筆で描かれ「物語も構成できるんだ」と成長を実感したといいます。長女は絵本を4歳下の次女に読み聞かせていました。「成長の証し」は、長女が小学生になった今も大切に保管しています。

多様な表現を認めて

札幌大女子短大教授で造形教育や幼児教育が専門の阿部宏行さん(67)は幼児の絵本作りについて「『無』から『有』を作り出して、表現する喜びが育ちます」と説明します。「子どもが描いた絵を、家族に見せて思いを共有し、コミュニケーションも深まります」といいます。

阿部宏行教授

阿部宏行教授

1冊の構成を考えるのは難しそうですが、「描いた絵をスクラップするだけで絵本になります」と助言します。構図や奥行きを意識した絵を描けるようになるのは9歳ごろからで「描き方やページ数にこだわらず、多様な表現を認めて」と強調します。

札幌市厚別区のイラストレーターで手作り絵本講師の山田白百合さん(67)は「子どものペースに合わせて、絵本作りを一緒に楽しみましょう」と勧めます。

2人の意見を基に絵本作りのアイデア=表参照=をまとめました。①子どもに話しかけながら作ります。数色の絵の具を紙に垂らして二つ折りにし転写。開いて乾かした後、「何に見える?」と聞いて答えを文にします ②子どもの名前や好きな食べ物などをテーマに、しりとりをして絵と文にします ③子どもや家族の写真などを切り貼り―などがあります。

絵本づくりのアイディア

使い慣れた道具使用

山田さんによると、幼児向けの画材は、クレヨン、色鉛筆、サインペンなど使い慣れたものが良いといいます。描きたいものをイメージすることが難しい場合、写真を見せたり、書けない字を書いたりしてあげるなどサポートが大切です。

「かんたん製本の絵本」の作り方を紹介する山田白百合さん

「かんたん製本の絵本」の作り方を紹介する山田白百合さん

札幌市えほん図書館(白石区)で、3歳と3カ月の息子のために絵本を選んでいた、札幌市北区のパート従業員芳沢玲美さん(35)は「誕生日や入園式など、子どもの記念に作ってみたいです」と話していました。

飛び出す仕掛け絵本

植草学園短大・植草教授に聞く 作業通し知的好奇心を発揮

植草一世教授

植草一世教授

絵本作りと幼児の発育に関して詳しい植草学園短大(千葉市)のこども未来学科教授植草一世さん(66)は「絵本作りによって、幼児は達成感を得るほか、知的好奇心なども発揮します」と解説します。

植草さんは2013年に千葉市内の年長の幼稚園児35人を対象に共同研究を実施。保育者を目指す学生や保護者の協力の下、絵本作りに取り組んで、園児の様子などを聞き取りました。

作った絵本は ①図鑑系 ②物語系 ③思い出系に分類しました。図鑑系は、興味のある虫や怪獣などを絵や写真で表現した作品。好きな対象を自ら探る活動になり、協力者からは「知識をまとめる力、構成力、表現力、調査力が身についたのでは」という意見がありました。

物語系は、経験や空想に基づいて架空の世界を生み出した内容で、想像力を膨らませ、園児の気持ちを表現した作品が見られました。協力者からは「達成感を得て、自信がついたようです」などの声が上がりました。

思い出系は、子どもの思い出や経験を絵や写真、文章でまとめました。楽しい体験や感動をどう伝えたら良いかを考え工夫しました。家族と思い出を話し合いながら作業する例もありました。

植草さんは「絵本の構成は、保護者らの協力が必要。興味を持った対象や思い出に共感して、アイデアをほめてあげてください」と話しています。

取材・⽂/田口谷優子(北海道新聞記者)

この記事に関連するタグ

Area

北海道外

その他